第9章 aims
「…穂波と外泊するの初めてだし。 なんか… 別に、こういうとこが良かったわけじゃないけど。
どこでもいいから、ってわけには行かなくてでも… 色々調べてる余裕もなかったし… なんか…」
それで、冗談でタクシーのドライバーさんが挙げたこのホテルにしたんだ。
…なんか、ツッコミどころがなくはないけど……
たまに大胆っていうか、オーケーと思ったらオーケーみたいな、素早い決断力。
でもそこにあたりまえの如く常に思考がついてきていて。
研磨くんの、魅力のひとつ。
「朝もゆっくりできそうだしいいかなって…ほら穂波、朝、なにかと動いてるから」
『………』
「なんか… 目的がどんどん変わっていった。 目的はひとつじゃなくていいよね」
『…ん』
「だからいくらでもできるし」
『…?』
「抱き潰す」
『 ! 』
研磨くんの口から溢れた「抱き潰す」というちょっと、激しめなワードに。
そんな言葉すらも、いつもの研磨くんのままさらっと言ってしまう研磨くんに。
胸がどきどきして。
それからお腹の下の方がキュッとして。
そしてめまいがした。
『…んと、部屋、みる? …あ、えっと… お風呂っ とか…』
獲物を捉えることを心から楽しんでいるような、鋭くもわくわくした眼。
その目に見つめられて、妙に、慌てた。
「…ふ、そんなずっと続けてしないよ。おれ体力ないし」
『どっ…』
「…ど?」
どの口が言ってるの。
研磨くんは大体いっつもゆっくり嬲るように、わたしを追い詰めるじゃない。
体力ないって… もっと…
『どっ…どうしようかな…』
「え?」
『え?』
「…笑 言おうとしてたこと誤魔化したでしょ。
でも、そうだね、それなりにお金払うんだし、じっくりみよっか」
『………』
「40万なんて、穂波と一回シただけでもう、元取れるどころか……安すぎなくらい」
『にゃ…にゃ…にを……』
「一生かかっても払えないから、一生おれといてね」
一体何を言ってるの。
いつもの調子で、一生とか、突拍子もない例え話とかついていけない…