第9章 aims
ー穂波sideー
まだ、みんな帰らないみたいだから。
のんちゃんたちの仕込みを邪魔しない程度に調理室にお邪魔させてもらって。
洗い物が来てからはお手伝いさせてもらって。
「おー、穂波ちゃんが皿洗ってる!なんか懐かしいな!」
翔陽くんがトレーを持って元気に登場。
『…ふふ、お皿ありがとう。そこに置いておいてね』
「おー!阿部さんごちそうさまー!」
「穂波、そろそろ行こうかなと思うけど」
『あ、うん。じゃあ、キリのいいとこまで……』
「あ!良いですよ、わたしやりますんで!今日お会いできて本当によかったです。
…それからわたしも穂波さんのダンス動画希望する1人です!始めたら教えてくださいね!」
マネちゃん達がさっきそんな話をしはじめて。
その話題がまたここでぶり返されたことに少々驚きつつ。
『…ふふ、ありがとう。もしそんなことがあったら、ね』
やっぱり京治くんとのんちゃんはどこか、似てる。
でも、きっと、もし万が一、動画をネット上で公開するようなことがあっても。
誰にも何も言わないと思う。
家族とか研磨くんとか、そういうほんとーに近い人くらいにしか。
なーんて考えたりして。
あんなにイメージの湧かなかった動画を投稿するというアイデアが
割合すーっと自分の中に浸透してきていることに少し、驚いた。
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「どうせだし校門まで一緒に歩こうぜ!」
銭湯グッズを取りにいく翔陽くんにそう言われて、一緒に階段を登る。
まだ卒業して数ヶ月だけど、毎日通ってた場所に数ヶ月来ないのはたまに来ていた場所のそれとは違う。
既にすっごく懐かしい。
「あ!そうだ!ノヤさん!」
「 ! 翔陽、声デカい……」
いきなり一際大きな声を出すものだから、研磨くんびくぅってしてた。
まるでその声に集まってくるかのようなタイミングで山口くんや蛍くんやクロさん達が後ろから、
前から影山くんが、わたし達を挟むように階段で合流した。