第9章 aims
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科博の地球館地下一階。
それはいわずもがな、恐竜の化石標本に囲まれるとこ。
恐竜の謎を探る、だ。
もう、蛍くんの表情ったら、目のキラキラ度ったら、
やや前のめりになった姿勢ったら、黙りっぷりったら。
たまらない。
科博に来てからずっとだし、地球館に来てからはもっとだし、
地下2階からもうだいぶ最骨頂感は出てきてたけど。
ここにいる蛍くんをみれば一眼で分かっちゃう。
ここが最骨頂なんだ。
やっぱりティラノサウルスの力かな。
蛍くんの一番好きな恐竜。
わざと反対側に回って、展示越しに蛍くんを見たり。
わたしは展示を見つつ楽しみつつ、完全に蛍くんを味わっていた。
「穂波さん、すきです」
『へ?』
恐竜の化石に囲まれて
ティラノサウルスの化石を目の前にして、
ほわほわでいっぱいであろう蛍くんが、
わたしの隣に来て行った第一声がそれで。
間抜けな声が出た。
「すきなもののある空間をこんな風に共有できる人なんて。
そうそう現れる気がしない。 僕、遠距離なんてもう慣れたし。
その点においては孤爪さんより経験値高いから。
僕のこと忘れないでよ、全部。体温も、匂いも、舌の感触も、骨の…」
『………』
体温は蛍くんが言ってもうん、って感じ。
匂いもまぁ、うん。
舌の感触、まで来たとこでちょっと変態感。
骨の…ってワードがでてきて、あぁ、蛍くんやっぱこの展示に持ってかれてるんだって思った。
確かに骨格とか骨張ってるとことか。
しっかり記憶されてるものだ。