第9章 aims
ー穂波sideー
「まだ時間あるんでしょ?今から夕飯なんだけど、一緒に行く?」
みんなの顔見て、挨拶したら帰ろうと思ってるんだけど。
でもそうだな、のんちゃんにも会いたいし、翔陽くんは研磨くんと話したそうだし。
他のみんなもそんな感じだし… 良いのかな、ちょっと長居しても。
『うん、行こうかな』
「…じゃ、手でも繋ぎましょっか」
にやにやっていたずらな顔でわたしを見下ろす蛍くん。
3年生になって、どんどん、どんどん、魅力は増すばかり。
彼のこの大人っぽさや落ち着きと、
いたずらな感じ、少年っぽさの両面使いは。ずるい。ずるすぎる。
『…え、うん、はい?』
言われた通りにに手を取ると、一瞬ばっと振り解きそうになってそれからぎゅって握り返してきた。
「…馬鹿じゃないの、こんな部活の場で手繋いだりして」
『 ! 蛍くんが言い出したのに!』
「冗談に決まってるデショ。ほんと、穂波さんってそういうとこ素っ頓狂だよね」
でも、手は結局、繋いだままなんだな、とか思いながら歩いて。
蛍くんはご飯を食べに行って、わたしは調理室へのんちゃんに会いに向かう。
「…ちょっと待って」
『…?』
すぐそばで蛍くんの声がして振り返ると、
ぎゅって抱きしめられた。
『…わ びっくりした』
びっくりしたけど… 安心する。すごく。
もうすっかりわたしは蛍くんの体温や匂いを覚えてしまっていて。
久しぶりに会ってもなお、いや久しぶりだからこそ。
込み上げるものが、ある。
「もう、多分、ほんとにしばらく会えないでしょ。
アメリカ行くまでの間にも会える気しないんだけど…会えるの?」
蛍くんの声が少し…張り詰めてる。 初めて聞いた。
苛立ちとかではない、張り詰め方。
どうしよう、きゅんが、すごい。