第3章 くじら
ー月島sideー
別に阿部さんがいてもどっちでもよかったんだけど。
だって僕が穂波さんのことすきなのは、
穂波さんも孤爪さんも知ってることで。
その2人が知ってたら、
別におおっ広げにする必要もないけど、隠すとこも他にないっていうか。
かわいい、って揶揄ってるわけじゃないんだけど。
ほんとに思うから言うんだけど、でもそうだね。
この、途端に恥ずかしそうにするこの穂波さんを見たいって気持ちは確かにあるわけだから。
からかってるとも、言えるのかな。
僕の向こうで、顔を赤らめもじもじする穂波さんは…
「ほんっと、かわいいですね」
追い討ちをかけるように言うと、両手で顔を覆って
蛍くん〜〜〜 と、かわいい声を出す。
…だからそれが、かわいいって言ってるのに。
「…おいしいです。やっぱもう少しご飯食べれそう。おかわりもらってきます」
『あ、こっちにまだあるからわたしよそおうか?』
「え、いいんですか。 .…やった、じゃあお願いします」
『もちろん。どのくらいにする? いつもの…』
「いつもの半分くらいよそってもらえたら」
『はーい。おかずは足りてる?』
「うん。おかずは多めにとった、絶対食べれるって思ったから」
『…ん』
座っててね、って僕の茶碗を持ってお釜のとこへ行く穂波さん。
立ち上がり、ゆっくりと静かにうしろからついていく。
『…わ』
「すきです、穂波さん」
『へ…あ…うん、わたしも』
…はぁ、ほんとこの人。馬鹿じゃないの。
後ろからそっと抱きしめて、
身体をかがめ耳元ですきと囁けば。
ここで、わたしもって何の裏もなく言っちゃう辺りほんと…
僕と彼氏以外の男と2人になんてなるな、って本気で言いたくなる。
「…キスしたいな、こっちむいて?」
『え?』
ほら、ほんと馬鹿みたいに僕を信頼して。
僕の方に振り向く。