第8章 そういえば
ー研磨sideー
赤葦を家の近くで下ろして、国立の家まで帰ってきた。
明日穂波は池袋でレッスンだから
その前に実家に車置いて行けばいいってことになってるって。
ラングラーって結構ゴツいのに、これで普通に運転できてるなら大丈夫なんじゃないのとか思う。
「運転ありがと」
『ううん、こちらこそありがとう。運転、まだ練習なのに』
「アキくんの車って何?」
『スプリンターってわかる? それとGクラスと240Dってヴィンテージのやつ』
「…あぁ、そっか。スポンサー。 スプリンターってのもベンツ?」
アキくんのスポンサーの一つはベンツだった。
だから全部、ベンツってことか。
『うん。スプリンターは向こうでは結構見るんだけど、大きいんだよね。
だから日本ではあまり見ないのかなぁ? 横も縦も大きいから。
その中でも2番目に大きいやつで、内装はサーフトリップ仕様になってる。
運転は無理。乗せてもらうのは大好き』
「へぇ、大きいんだね。穂波が乗るならどれなの」
『どれでも良いって言ってくれてるけど… Gクラスかな、完全にプライベート用って言ってたから』
「…仕事用とプライベート用?」
『うん、なんか税金とかのいろいろだって。結局ごっちゃになることも多いみたいだけど…』
税金、か。
おれもちゃんと知っとかなきゃ。
考えてはいるけど、そんな簡単には細かい仕組みまではわかんないから。
周平に聞いてみよ。
周平のお母さん、税理士だし。
『ワーゲンのヴィンテージキャンパー一台でいいって思ってたみたいなんだけど。
スポンサーがついてくれて、そうも言ってられなくなって。
ワーゲンは仲良いお友達に乗ってもらって、せめて…ってベンツのヴィンテージ買ってた。
でも、いい感じに落とし所見つけて。あばあばしてないお兄ちゃんがすき』
スポンサーとアスリートの関係、も、いろいろあるんだろうな。
…スポンサー、アキくんの話聞いてから面白そうだなとは思ってて。
でもサポートしたいほどおもしろい対象って、そうそう出逢えない気がする。
お金のためにサポートするんじゃなくて。
おもしろいなって思うなら、スポンサーつきたいなって思う。
おもしろいって思わせてくれる限りは。…まずはそこまで、いけるといいんだけど。