第8章 そういえば
ー穂波sideー
「この通りに蕎麦屋があるみたいだけど」
『お蕎麦、いいね』
携帯で調べて、京治くんがナビゲートしてくれる。
「孤爪にも聞いた方がいいよね。起こしてもいいかな?」
『…あ、うん。どのみちそろそろ起きた方がいいもんね』
研磨くんは出発してから今までぐっすり寝てる。
いびきなんてひとつも立てずに、すーすーと綺麗で愛らしい寝息を立てて。
「孤爪、そろそろご飯食べるけど… 起き…」
『…?』
「…いや、ちょっと。 俺起こせる気がしない……」
京治くんはどうも… 寝てる人を起こすのが苦手らしい。
「…ふぁ…… 喉乾いた」
『あ、研磨くん、起きたね』
ちょうど研磨くんが起きた声がして。
水筒の蓋をカラカラ開ける音がする。
「…ん ふぁ…… もう秩父?」
『うん、ご飯食べよっかって話してたとこ』
「…ん」
「何か食べたいものある?」
「…蕎麦」
『…ふふ』
「…笑 じゃあちょうどいいや」
「…?」
とんとん拍子すぎる流れに京治くんと笑ってしまった。
それならば、このまま道なりに進んで左側にあるという、お蕎麦屋さんへ。
いざ、ゆかん。
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「…じゃあ、今はゲームだけじゃなくて株も始めてるってこと?」
お蕎麦のセットを頼んで待っている間に研磨くんのこの頃の話に。
「…うん、そう」
「なんて言うんだっけ… トレーダー?」
「…んー、まぁ でもまだ始めたばっかだからそんな呼び名とかいらない。
ただ、株を買って、チャートみてるだけ」
「寝る時間はあるの?」
「…とりあえず東証だけだから、普通に寝れるけど」
「…東証。 国内市場だけってこと?」
「…うん、国内っていうか… 東京…まぁ、時差ないし国内でも一緒か。
でも、ゲームして遅くまで起きてることあるし。そういう時は欧州とかNYのも見ては、いる」
「…へぇ それで……」
すごいなぁ、京治くんは。
わたしはそんな具体的な質問、全然出てこなかったのに。
知識が深いし、やはり聡明だ。