第8章 そういえば
「穂波ちゃんは?何か、してる?」
全く使いこなせてはいないけど、
穂波ちゃんがSNSをしているのなら、
それは繋がりたいな、と思った。
『結構前からやりなよとか言われてるんだけど、FacebookとInstagramのアカウントを持ってるだけ』
「へぇ、そっか、海外の友達とか?」
『そうそう、あと高校の時の友達とか。
やっぱ写真付きで近況がみれるのは嬉しいからって。
でもいかんせん、写真撮らないんだよね、わたし』
「…その気持ちはわかるけどでも」
『…?』
「穂波ちゃんの様子… ダンスしてるとことか。見れたらなとは思うな。
そりゃあライブで観るのが一番なのはわかるけど、さ」
ダンスの動画? 全然、イメージ湧かないなぁ……
と運転しながら穂波ちゃんは首を傾げる。
「黒尾さんたちの卒業式の動画、
たくさんの人が穂波ちゃんたちのパフォーマンスに元気をもらったと思うんだよね。
今でも再生回数は伸びてるってみんな話してたし。
大学で知り合った友達でもいきなり話し出す人とかいて。びっくりする。
まさか、友達だとは言えない感じで、話し出すから」
『………』
「とにかく浸透率がすごいね、YouTube、それからそれらも拡散し得るSNS」
『ほんとだよね、すごいよね』
「とにかく俺は、穂波ちゃんが気持ちよく踊っている姿は動画でもいいから観たいなって思うよ」
『…ふふ、ありがと。 前向きに検討…するかはわかんないけど 笑
ふとした時に背中を押してくれると思う。その、京治くんの気持ちが。 …だから、ありがとう』
前を向いたままじゃいられなかったのか、
カーブを曲がり終えて、直線の道に入ると、
一瞬こちらを向いて俺の目を見つめ、穂波ちゃんは笑顔でありがとう、と言った。
俺はただ、俺の願望を伝えたまでなのに。
こんな綺麗な笑顔を乗せて、お礼を言われるなんて。