第8章 そういえば
ー穂波sideー
「いや、普通に安心して乗ってられるよ、俺も」
わたしはその、京治くんの声に安心をもらってる。
『…ならよかった。 でも、くれぐれも油断なきよう…
というかわたしね、壊滅的にバックができないの。車庫入れでだいぶ鍛えられたけど…』
「そうなんだ、でもまぁ、こうして一人で運転してもいいよって親御さんが言うんだから」
『ううう… うちの親はその辺全然、ゆるゆるなんだよ〜
だからもし万が一停めれなそうだったら、京治くんにすがりつくかも』
「…笑 俺が、上手くできるかはわかんないけど」
京治くんの方が絶対上手いに決まってる。
それに、研磨くんは絶対、車校行かなくても、完璧に運転しちゃいそうだ。
少し触って、へぇ… ふーん… って言って。
研磨くんこそアメリカで免許取ってしまえばいいんじゃないかな、と、今思った。
教官と2人きりで何度も練習…とかないし。
研磨くんはきっと、運転技術、余裕だから本当卒業するために回数こなす感じになるだろうし。
向こうで誰か友達に何度か見てもらって、免許、とってしまえばいい。
赤信号の間に、脳内で勝手に妄想が繰り広げられる。
『…そうだ、キャンドルね、引っ越したときに使い始めたの』
「あ、そうなんだ」
『いい香りでね、また同じの買ったよ。京治くん、ありがとう』
丸の内で会った日の帰り、京治くんがMarks & Webのキャンドルをくれた。
ゼラニウムの香りの、キャンドル。あと他にも、わたしの好きなゼラニウム香りのプロダクトをいくつか。
いつの間にか買っていて、さりげなく渡されて。
なんて、知的で、紳士的で、パーフェクトなんだろうって。
パーフェクトって何様よ、って感じだけど、なんだろう、
京治くんは抜けたとこも含めて、そのエキセントリックなとこも含めて、
本当にパーフェクトだと思う。
その抜け感、隙がなさそうでいっぱいある感じ… ずるいずるい、完璧すぎますって。思うんだ。