第8章 そういえば
『隣に来てくれてありがとう』
「いやいや、こちらこそ。運転ありがとう。
俺もまだ全然経験ないけど、もし何かあったら交代するから。
…って保険は穂波ちゃんにだけ適用?」
『ううん、年齢のやつ。 …でも、自分でできるように頑張るね。
でも、ありがとう。 心強い』
後ろの席から、2人を眺める。
2人が最後に会ったのは丸の内でだって、穂波が言ってたな。
あのときの様子は、またもクロからTwitterで送られてきて。
ちょっと、びっくりしたけど。
でも想定内っていうか。
なんとなく、ストーリーみたいなのは想像がついた。
──【パパラッチ!】
っていうテキストと一緒にTwitterのリンクが送られてきた。
開いてみると、なんかすごいドラマティックな感じの写真。
【被写体に、承諾を得て載せています。
オアゾ前で見かけたドラマチックな時間。
オフなのに、つい、撮ってしまった。
ちなみに恋人同士ではないらしい。
…あ、浮気とかそういうややこしいやつでもないらしい】
フォトグラファーとして活動しているらしい投稿主が挙げていた4枚の写真。
傘をささずに雨の中歩いてる女性に向かって、折り畳み傘を開きながら走る男性の後ろ姿。
呼び止めて女性を傘の中にいれてる姿。
ばって傘を落として女性を抱きしめる姿。
それから、2人で一つの傘に入って歩き出した姿。
顔はほんと、上手い具合に写ってないのに、穂波と赤葦だってすぐに分かった。
綺麗で劇的で、この2人こと知らない人たちがいっぱいいいねやリツイートをしてる理由みたいなのは、
理解ができる、写真だった。
で、2人のことを知ってるおれからしたら、それもそれで別段、危ない写真じゃないんだけど。
とにかく、木兎サンがうるさいって、クロが言ってた。
多分赤葦の電話に着信鬼みたいにいれてるだろうな、って。
あとから聞いたけど、本当に驚くほどに着信とLINEが入ってたって。
2人で笑って、それからビデオ通話したとか言ってたっけな。