第8章 そういえば
ー研磨sideー
「あ、赤葦」
今日は木曜で。
穂波は朝から16時まで、心さんたちの店の手伝い。
おれは大学の講義のあと一旦家に戻ってから実家に帰って。
今、歩いて穂波ん家まで来たとこ。
家の前で、赤葦と遭遇。
「おぉ、孤爪。久しぶり。元気そうで何より」
「…ん、赤葦も」
「すごいな、ネットニュースで流れてきたよ。あれ孤爪のことだろ?」
「…別に」
先々週、ワールドグランプリがあって。
それで優勝したから、それのこといってるんだろ。
「入ろ、押すね」
インターホンを押して、穂波の声がして。
少ししてからガチャと扉が開く。
今朝はおれらの家で朝を過ごして、別々のとこに行って。
今また違うとこで迎え入れられるってなんか。
ちょっと、フシギな感じ。
『研磨くん、京治くん。うちまで来てくれてありがとう。すぐ出る? お茶飲んでく?』
「お茶はいいよ、また、国立の家に遊びにいかせてもらうからその時にでも」
『ほんと?じゃあ、もう行こっか』
そう言って穂波は鞄と、それからラングラーの鍵を手にとる。
ほんとは赤葦のアパートのある高田馬場と国立に迎えにいけば良いんだけど…
まだ都内での寄り道怖い… って穂波はここに集合することを提案してきた。
今月の上旬に穂波は無事免許を取得して。
アメリカ行くまでにそれなりに慣れとかないとってことで、
このラングラーを時折貸してもらって運転してる。
おれは同乗するの2回目。
そのときはちかく… 石神井公園まで行っただけ。
正直チョット怖かったけど、でも、まぁ… あれから少しは慣れたみたいだし。
『…安全第一で運転しますので。 あぁ… 人の命を預かるんだから』
穂波はほっぺたを軽くペチペチしてる。
「赤葦も免許取ったんでしょ?」
「あぁ、受験後に合宿でさくっと、とっておいた。
運転する機会がないからペーパーだけどね」
「運転上手い?」
「上手いかはわからないけど… 下手ではないと思うよ」
「…助手席、座ったら?」
2人は後ろにって言われたけど。
その方が良いかなって。