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【ハイキュー】 続・波長 【孤爪研磨】

第8章 そういえば







慌ててリュックから折り畳み傘を取り出して、
開きながら追いかけた。








「穂波ちゃん、濡れちゃうよ」

『…あ、ごめんね、気を遣わせちゃうよね。 ごめん』









いつになく申し訳なさそうにシュンとした顔でそう言う穂波ちゃんは、
髪や頬が濡れていることも加味して、あまりにも愛おしくて。 

俺は思わず、抱きしめてしまった。

傘を、落として。
本末転倒とはこのことだ。










「…あ、ごめん、つい」

『え、あ、ううん。 あったかいね、京治くん。
雨に当たると冷えちゃうから、の意味が身体でわかっちゃった』









そう言ってくすくす俺の胸の中で笑う穂波ちゃんを離したくはなかったが、
雨足も強くなってくるし、諦めて身体を離し傘を手に取った。










「…地下道から行けるって思ったけど、穂波ちゃんは雨の中歩きたいのかな?」









さっき振り返った穂波ちゃんの顔は申し訳そうながらもどこか恍惚としていて。
あぁ、雨に連れていかれてるんだ、とよくわからないことを、すごい確信を持って理解した。










『…え、あ、でも』

「そんな土砂降りなわけでもないし、風が強いわけでもないし、すぐそこだしそれに…」









折り畳み傘の下で俺を見上げる穂波ちゃんの破壊力に…
理性を必死に保ちながら言葉を紡ぎ出す。









「穂波ちゃんと傘さして歩きたい。
…なんていうんだっけこれ、相合い傘、だっけ?」

『…ん、それなら。うん。お言葉に甘えて… ありがとう。靴大丈夫かな』

「まだ降りだしてそんな経ってないし、そんな大降りじゃないし。気にしないで、行こっか」











申し訳なさそうな表情がふっと消えて、
花のようにふわりと笑うその一瞬に。






あぁ、俺はこの人のことが好きで仕方がない、と改めて思った。
恋というのは同じ人に何度も、するものらしい。













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