第8章 そういえば
「週間少年誌の担当とかにされるよ、きっと。
…まぁ、それもおもしろいんじゃないって思うけどね。 って言ったんだよ」
『予言…』
「だろ? 予言みたいでぞっとしたし、いや俺は文芸を強く希望するって、なぜか孤爪にプレゼンしそうになったよ。笑
ともあれ、週刊少年誌ということはそれなりの大きな出版社だろうから、そこには安心したというか」
『ふふ… 大小が関係あるわけではなくて、だよね?』
「あぁ、うん。会社の大小の話ではなくて、孤爪の予想の中で俺は大手に就職したんだな、っていうか。
すごく曖昧且つ説得力のないはずのただの仮定でしかないのに。
ぞっとする恐怖心も、その安心感も妙に確信をついたものに感じるのは、孤爪の力というか。孤爪故のものだよね」
そんな話をしていると、ランチが運ばれてきて。
洋食屋さんの洋食が食べたいなって、洋食屋さんに来たのだけど。
京治くんはロールキャベツ。
わたしは帆立のクリームコロッケ。
ほかほかと湯気のあがるそのさまを見て、
あぁ、洋食屋さんの湯気って格別だなぁ… って思った。
「さりげないペアルック、素敵ですね」
お料理を運んでくれたお姉さんが、
さらっと綺麗な笑顔で、そんなことを言って。
そうだそういえば、かぶってるなって思ったんだった、って。
黒だし、グレーだしよくあることだよね、って。
京治くんはグレーのニットに黒いパンツ。
それからパタゴニアのマウンテンパーカに黒いリュック。
クロのハイカットコンバースを履いてて。
そう、色はかなりかぶってるんだ。
アイテムとしては、黒いコンバース、くらいなんだけど。
研磨くんと歩いてる時も言われたし、蛍くんと歩いてる時もあった。
今日は京治くんと。
遊児とは一度もないな、と思った。
基本ベーシックな色を着る2人だと、よくあることなのかもなって、一人納得した。
『…あ、ペアルックではな……』
「…そうなんです、被ってしまって。でもこういうの、嬉しいなと思いながら一緒にいます」
ひぇ… そんな真っ直ぐお姉さんの目を見ながら、
そんな真っ直ぐな言葉を。
お姉さん、少し驚いた様子を見せながら、
わたしの方をにこって、見た。