第3章 くじら
ー研磨sideー
「うおおおおお!やっぱうめーーな!穂波ちゃんのごはん!」
今日の昼、調理室で食べようと思ってたのに。
翔陽につかまった。
犬岡もリエーフもいる。
なんでいつもこのメンバー……
なぜか虎はこういう時いなくて、
去年は大体クロたちと居たし、今年は龍之介といる。
まぁ、居てもうるさいときはうるさいだけだけど、
でも翔陽とリエーフみたいにエンドレスじゃない。
「うん、美味しいよね。ほんと、いつも」
美味しいのはほんと、いつも美味しいし。
翔陽はいつも、おもしろいし、まぁ、いっか。
でも半分くらい、穂波の味じゃない。
このサラダとか。普通にすごく美味しいけど、穂波の味じゃない。
阿部さんにやってもらったんだろうな。
麻婆茄子、棒棒鶏サラダ、きゅうりの梅肉和え、中華もやし、
豆腐とわかめの卵スープ、ごはん、すもも。
梅肉和えと麻婆茄子は穂波の味がする。
どれもやっぱ、美味しい。
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「おー!山口!一人?月島は?」
「あ、日向。うん、一人なんだけど隣良い?」
「もちろん!」
「…失礼します」
山口がぺこっとおれを見て会釈する。
おれも小さくぺこって返す。
穂波は実はこの、山口のこともかなりすきだ。
犬岡に対する好きに近い気がする。かわいいが強いというか。
弟になってほしい、そんなの無茶だけど。って言ってた。
あとそばかすがすきなんだって。だから、それも相乗効果でたまんないらしい。
「月島は?ちゃんと食ってんのかな。 あ、穂波ちゃんのご飯だから食ってるか」
「あぁ、うん。そうだね」
山口は穂波のことが話に出たから、ちらちらとおれを気にしながら答えた。
そっか、月島は調理室に行ったのか。
別にそんな、山口が気を使わなくていいのに。
月島本人も全然、気を使ってないんだから。