第7章 su casa
ー研磨sideー
歯磨きして、トイレ行って。
2人で寝室に。
それにしてもぶっ飛んでたな、映画。
実話を元にしてるとか。
なんか色んな金持ちがいるのか、ほんとの大富豪ってあんな感じなのかな。
会ったことないからわかんない。
おれはアキくんの感じがいいな、って思う。
ふつーでいい。 ふつーがいい。
…あ、たぬきのおじさんもそうなのかな、でも確かにあの人は、
危ないこともいっぱいやってきてそうな妙な貫禄があった。
『…研磨くん』
「…ん?」
『欲しく…なっちゃった』
「………」
まだベッドサイドに間接照明がないから、
蝋燭をつけて布団でごろごろしてると穂波が絡みついてくる。
腕も足も声も、甘く誘い込むみたいに、おれを絆す。
吸い寄せられるように唇を重ねながら
パジャマのボタンを外していく。
穂波の手はおれのTシャツの裾にかけられて。
脱ぐように促される。
おれに跨って、上も下も穂波の指と舌で弄ばれて、それから……
身体を重ねた。
眠いのに、できるのはなんで。
昂まったものを吐き出して。
息を荒げながら携帯で時間をみるともう1時半だった。
「明日のこと考えなくていいとか」
『………』
「やばい… なんかちょっとだけベルフォートの気持ちがわかる」
仕事がどう、予定がどう、とかじゃなくて。
溺れる感じ。
セックスとかドラッグとかそういう、快楽に。
おれはまだまだこれからだし、
ただ2回大会に優勝しただけで、何も成してないから、
絶対溺れちゃダメなやつだし、
そこそこ成せたとしても溺れる気はさらさらない。
おもしろいこと追求していきたいし、うん。
ふつーでいい。
けど今、入学前の春休みでまだ予定っていう予定はなくて。
そんなの部活ずっとやってたからなかったし。
なんていうか、生活がだらけていく、快楽に溺れていくその原理っていうか。
そういうの、すごい理解できる。
だって穂波のナカってほんと気持ちいいし。
溺れようと思えばいくらでも溺れれる。