第3章 くじら
ー穂波sideー
のんちゃんと2人で昼食の仕込み。
切ったり混ぜたり、
放ったらかせるオーブンも使って色々同時進行で。
至る所で火を使ってて部屋は熱くなるけど…
「穂波先輩っておモテになるのはわかってましたけど…
ほんとにおモテになるんですね。 でも、なんだろうこの感じ。
うん、わかるよって、なります。 その、相手に対して」
『…?』
サラダのドレッシングを合わせながら
のんちゃんがよくわからないことを言う。
「…あ、なんでもないです。それから、孤爪さんの気持ちもすごいよくわかるんです」
『研磨くん?』
「いろんなこと、好きにしててねっていう感じがすごい伝わってくるし、
その気持ち、すっごく理解できます」
『…うん? ありがとう。嬉しい』
「私はどっちかって言うと、孤爪さん側になるけど。
いや、全然違いますね、すみません…
のびのびしてるのをみてたい側という括りでいえば、の話で…
そんな人に出会いたいなぁ、そんな関係性を持てたらいいなぁって憧れます」
『きゃ。憧れだなんて。嬉しい。 でもね…』
「はい」
『憧れは、なんだろ、大切だけど、あくまでもなんていうか…
ふんわりとさせておいた方がいいよね、とか思う』
「あぁ、わかります」
『だよねだよね!
憧れはちょっと力脱いた感じでそこら辺の、
でも綺麗にしてある棚にほいっと置いておけば、
いつしか自分のものになってるかもな、とか。
そういうこともあるかもな、とかとか』
「そこら辺の、棚…」
のんちゃんをはてな顔にさせてしまった…
『ドレッシングどんな?いい感じにできた?』
「酢を入れすぎてどうなることかと思いましたが、なんとか。味見お願いします」
『うーん、美味しい♡美味しい美味しい♡』
「野菜と混ぜてちょうど良いくらいですか?もっと濃ゆい方がいいですか?」
のんちゃんは、何事にも真っ直ぐで本当に可愛らしいなぁ。
『うーん、いいと思うよ。
もし混ぜてあれ?ってなったら足してみる方がいいかなぁって、わたしは思うかなぁ。
でももっとごま感出したいとかだったら先に入れといたがいいかも?』
とかなんとか、
ピーチクパーチク話しながら時間が過ぎてく。