第7章 su casa
ー研磨sideー
宅配便の車はあのままバックして戻って。
いくつか荷物を置いていった。
米が10キロと、野菜がごろごろ。お手製の蕗味噌。
稲荷崎の、信介さんから届いたらしい。蕗味噌は北さんのお手製だって。
おばあちゃんからの仕送りみたいでなんか和む。
あとはアキくんからの国際便。大きい。gift(rug, blanket)って書いてある。ラグ?
それからおれが頼んだものとか。
穂波はとりあえず北さんからの箱だけ開けて、
ご飯を作るって台所に行ったんだけど。
『oh baby lovely lovely way, 息を切らす〜♪』
食品店を出てからずっと、口ずさんでる。
自転車乗ってる時とか、聞こえないけど歌ってるのはわかった。
スーパーでも、今も。
米の袋を持ってダイニングに行くと
ふんふんとご機嫌な曲を口ずさみながら、台所であれこれしてる。
強く僕は感じまくるのさ
他の誰かじゃまるでだめなのさ、か。
他の誰かなんて知らないし、
おれにはちょっと陽気でかわいらしすぎるけど、
歌ってることは、言いたいことはかなりわかるな、とか要所要所で思いながら。
ラブリーラブリー歌ってるけど、
バブリーって言葉から連想したのかな、って思うとちょっと可笑しい。
「…それ、焼きマシュマロたち歌ってた曲だよね」
『あ、うん!1年生の時歌ってたね』
「昔の曲って言ってた?」
『オザケンだって。わたしもそれで初めて聴いたら、オザケンの曲ってすごいね。
ハッピーバイブスがすごくて、とってもいいよ』
「オザケン……」
『でも研磨くんは大橋トリオの方が好きと思う。カバー。
焼きマシュマロくんが教えてくれたけど、すごくいいよ』
オザケンってなんかの略?
大橋トリオって何?
『焼きマシュマロくんたちがそういえばその時…
オザケンコヅケンオザケンコヅケンって言ってたなぁ… んふっ』
「…なにそれ」
『研磨くんのことだって、コヅケン』
「…コヅケン」
『オザケンが小沢健二さんだから。孤爪研磨くんをコヅケンって呼んでみてた』
「なんだそれ」
愛称って苦手だ。
虎を虎って呼ぶのもちょっと、抵抗あった。
クロはそうでもなかったけど。