第7章 su casa
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目覚めると、見慣れぬ部屋。
眠り心地をまだ身体が覚えてないベッド。
川の音。まだ薄暗いけど時折聞こえる鳥の囀り。
隣にいるのは、研磨くん。
綺麗な肩を露出して、裸でわたしを抱き枕にして眠る研磨くん。
いつもの寝息、寝てる時の高めの体温。
いつもの肌の感触。 いつもの、研磨くん。
はぁぁぁ…… 幸せ……
どう、しようかな。
午前中、早めに出るって言ってたし、
それまでに洗濯やまだ綺麗だけど軽く掃除や。
ストレッチもしたい。
グラノーラとアーモンドミルクならあるからそれで朝食は簡易に済ませよう。
あと、昨日周平が買ってきてくれた苺もある。
…ていうか今日、食材買っておかなきゃ。
え、ていうか今日の研磨くんの夕飯どうしよう。
やっぱ起きなきゃ…
「…穂波…… いそがしくしなくていーよ」
『…あ、研磨くん。起こしちゃったね、ごめん』
「…いーの」
『…ん、ありがとう。 カーテンだけ閉めてくるね』
「…ん」
ぎゅっとわたしを包んでいた腕がふわ と解かれる。
生成りのリネン地で縫ったカーテンをしゃーと閉めて。
…喉渇いたな、と思ってそっと寝室を出る。
ダイニングのテーブルに置きっぱなしだった携帯を手に取る。
…いつから見てなかったっけ。
お母さんたちにも連絡してないし。
…連絡不精、気をつけなきゃ。
沢山の家電のお礼もみんなに伝えなきゃ。
…頭がいそがしくなってる。
深呼吸。
数回深呼吸して画面を見ると、信介さんからメールが来てた。
【こんにちは。ご無沙汰してます。
ばあちゃんから引っ越しのこと聞きました。
そんでばあちゃんに頼まれて、米を送りました。明日には届くと思います。
勝手に送ったで留守にする予定やったら手間かけるけど堪忍な。
一応追跡番号載せときます 0000-0000-0000。
卒業、引っ越しおめでとう。 信介】
昨日の昼前に送られてる。
だから…今日着か。
受け取れるかな、するっと受け取りたいな。
信介さんから送られてきた文を読んでると、
信介さんの声や人となりを思い出す。
それは、深呼吸と同じような作用をわたしにもたらすんだ。