第7章 su casa
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「…満月? 明るいね」
『…ほぼ満月』
明日、満月で。
だからすごく明るい。
キャンドルを消した今も、カーテンを開けていれば研磨くんの顔がよく見える。
今、わたしたちは裸でくっついてる。ベッドの上で。
部屋には今日届いたこのオーク材のベッドとデスクしかない。
かなりミニマムな状態。
「…ラグ欲しい」
『ね。シンプルなやつかな』
「うん。無地で、普通のでいいんだけど。ピンとくるのなかなかない」
『…イブルとかいいかもって今、ピンときた』
「イブル?」
『韓国のキルティングの布で… ラグとしても使えるはず。 …あした、ネットで見てみよ』
ヘッドボードに置いてある携帯に手を伸ばしかけた研磨くんの手をそっと握る。
こんな風に遮るのは初めてだけど… 気を悪くしないかなって今さら。
「…ん、そだね。今は穂波の顔みる」
『そ…んな……』
そんなつもりで遮ったわけじゃないんだけど…
研磨くんはわたしの髪を耳にかけ、じーっと見つめてくる
「…ふ かわいい 明日も明後日も穂波と寝れるなんて」
『…ん』
明日も明後日も研磨くんの隣で目覚めれるなんて。
ご褒美みたいだ。 まだ齢18歳のわたしへの、ご褒美。
それにしても特上すぎる。
「取り急ぎ必要なものとかちょっとはある?」
『…欲しいものはいくつか浮かんだけど急いで必要なものはないかも』
「そっか、おれ結束バンドが必要。 あといくつか。
来週ゲームの大会あるからそこに向けて部屋調整しときたいんだよね」
『うん』
「…明日、市役所行った後、買い物付き合ってくれない?」
『うん、もちろん』
「レッスンだよね」
『うん、△△駅』
「…おれの実家の駅」
『毎週通うから忘れものとかあったら取りに行けるね』
そう、わたしは毎週、研磨くんの実家のある駅にも、音駒がある駅にも通う。
渡米のタイミングでおしまいにするけど、それまでは続ける。
だからほんとに、贅沢をしている気分。
「…カーテンこのままでも寝れそ。眩しいかな、明日」
『まだ暗いうちに閉めとくよ』
「…そっか うん。じゃあ、このまま。 おやすみ」
額に唇に、そして閉じた瞼にキスが落とされ、
夢の中へとおちていく。