第3章 くじら
「邪魔じゃなければ…」
『あ、え!ううん、邪魔なんてことないよ!
今年はのんちゃんにつききりで手伝ってもらうから、早めに終わると思う』
「レッスンにはいくの?」
『レッスンはね、他の曜日に振り替えたよ。生徒さんもみんな夏休みだから』
「そっか、じゃあ…」
『…?』
夕飯の時間もここにいるのか。
ちょっと、新鮮だな。
去年は3回とも夕飯の時間いなかったから、新鮮だな。
「あ、いやなんでもないよ。ちょっと夜にゆっくり話したいなって思って」
『うん!もうそんなことが学校でできるのも限られてるもんね!』
「そうだね。じゃあ、また夜にゆっくり」
『うん、練習頑張ってね!』
「ありがとう。穂波ちゃんのご飯楽しみにしてるよ」
体育館についたので梟谷のみんなの元へ向かう。
烏野ももう到着しているようで、
そこここで再会を喜ぶ声が聞こえて賑やかだ。
…卒業するまでに、
俺の想いを伝えるだけ伝えようとは思っているのだけど。
もうずっと好きなままきて、
想いを伝えてどうこうしたいわけでもないから、
この際先に言ってしまえばいいのか、
卒業前に一言ずっと好きだったと言えば良いのか、よくわからない。
「赤葦さん、おはようございます。お久しぶりです」
月島に挨拶される。
「あぁ、月島。移動お疲れさま」
「えぇ… 梟谷、今年はずいぶん落ち着いた感じですね。うらやまし……」
「赤葦さん!おはようございます!よろしくお願いしあーす!!」
月島に被せるように日向が挨拶に来る。
穂波ちゃんは2月に月島と2人だけでスノボに行ったそうだ。
それを聞いた時は結構驚いたが、それと同時にまぁ、2人らしいなと思った。
穂波ちゃんと月島。
月島と孤爪。
それから、孤爪と穂波ちゃん。
…この場合3人らしいになるのか?
よくわからないが、とにかく驚きと同時に深く腑に落ちる感覚がたしかにあった。