第7章 su casa
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『はぁ〜 満腹満腹』
店を出てゆっくり歩き出す。
思いの外ボリュームがあって。
おれも穂波もお腹ぱんぱん。
これからご飯系は少なめでお願いしないとだね、とか。
普通に美味しかった。
洗練された、っていうよりはやっぱり大衆的で
みんなが抵抗なく違和感なく食べれるような味。
でも漬物はかなりおいしくって。
穂波はほっぺた落ちるんじゃないかって顔してた。
『美味しかったねぇ』
「ね」
『近くにこういうお店あるのいいねぇ、家から10分くらいだったかな?』
「ゆっくり歩いて15分くらいだったかな」
『ちょうどいいね。 腹ペコなら自転車でぴゅーんもできるし』
「ね、スケボーでも」
『お散歩がてらもいい道だし。 嬉しいな、うれしいな』
「…ん」
おれ、自分で思ってるより相当舞い上がってたみたいで。
さっき、間取り見ながら話してる時にそれに気付いた。
生活する時間帯のこととか、寝る部屋のこととか。
幸い穂波はなんとも思ってなかったみたい… っていうか、
なんかおれが浮かれてることを嬉しいとか言ってたけど。
でもこうして一緒に歩いたりしてると、地に足がつく感じ。
まだ引っ越してきてもないけど確かにもう、おれらの日常、みたいなものが
ここで新しく始まってる感じがある。
次のステージみたいなやつ。
川もあるし。木も多いし。
海はないけど、だいぶ良い、気持ちの良いステージだ。
『ゲームってさ』
「…ん?」
『新しいステージに行くと前のステージには戻れないの?』
「戻れるよ、また行ってみると気付かなったことに気付いたり、
前は見つけれなかったアイテムみつけたり、戦いたくないのにいちいちバトル始まって鬱陶しかったりする」
『…ふふ もうバトルしにきたわけじゃないのに、ってこと?』
「うん。 ただ探索に来ただけなのに、ってなる」
『ふふ。 でも、戻れるんだね。 いいね、それって。
いいな、戻りたいわけじゃないけど、戻れるっていうのはいいね』
「うん」
練馬のおれらの家から音駒周辺のあのあたりも。
おれらにとっては大事なステージで。
新しいステージに来たからって、無くなるわけじゃない。