第7章 su casa
ー研磨sideー
ホームルームが終わって。
穂波と帰る約束してる。
でも虎や福永にも部室前に来るように言われてる。
だから、穂波と一緒に行こうと思って席を立とうとしたら、
中庭のとこの渡り廊下から音が響き出す。
焼きマシュマロたちだ。
わぁーとか、きゃーとか声がして窓辺に走ってく人たち。
急いで教室を出る人たち。
なんか、いろいろ。
…どうしようかな、今出たら廊下は騒がしい。
おれは窓際の席だけどこのまま見てるって感じでもない。
現にもう窓際には人がいっぱいで何も見えない。聞こえるけど。
『けーんまくん』
「あ、穂波」
胸元にコサージュをつけて。
手に卒業証書のケースを持って。
穂波がおれのとこに来た。
何度もあった、これ。
おれの座ってる席に、嬉しそうにおれの名前を呼んでくる穂波。
弁当食べよだったり、クラスが一緒の時は移動教室一緒に行こう、だったり。
部活前に時間潰してるときだったり、レッスン行ってくるね、だったり。
テスト期間のときとは一緒に帰ろ、だったり。
もうこれが最後か、とかよくわかんない感慨みたいなものが心に湧く。
へんなの。
『じゃーん、焼きマシュマロくんたちからフリーパスが届いたよ』
穂波はiPhoneの画面をおれに向ける。
手描きでなんか、書いてある。
ステージ横へのフリーパス!
穂波さん、音駒高校バレー部とそのOBのみ使用可能。
だって。
「…虎たちに送ればいい?」
『うん、今研磨くんに送るね』
ラインでその画像が転送されて。
おれが虎と福永と、2年は犬岡に送った。
犬岡には一年にお願い、ってテキストも添えた。
集まりたいとか言ってたし、
なんかいろいろちょうどいいかも。
「…ん、行こっか」
『うん!』
手を繋いで2階の渡り廊下のとこまで歩く。
音楽は心地よく、校内に響いてる。