第6章 リレー
「翔陽はやっぱりいつも新しかった」
『………』
春高での話をしてるのかな。 この間の合宿?
出会った時から今までの、全部か。
「攻略できたと思っても、また羽化する」
『…羽化』
「でもちょっと、つまんなくなったときもある。
いや違うな… やっぱかなしいんだよね」
『うん』
翔陽くんを封じることを一度成功したとき、かな。
あのときはたしかに、悲しそうだった。
「穂波はまたちょっと違う」
『…?』
「穂波はやめれない」
『………』
んーとそれはすごく嬉しいのと同時に。
翔陽くんが聞いたらこわいんじゃないかな…
きっとそんな意味で言ってないけど。
だって、研磨くんは山本くんも福永くんも、もうみんな、みんなのことが大好きだ。
つまらないからって、人のことポイってする人なんかじゃない。
けどきっと、翔陽くんには、またきっとそれとは別枠の、楽しさがあるんだろうな。
カテゴリとしてはゲームに似てて、研磨くんがきっと初めて出会った、攻略したいって思わせる、ひと。
「…よくわかんないけど。 穂波はやめられない」
『うん。やめないで。わたしも研磨くんはやめられない』
「…ん」
『何度も羽化するって聞いて、全然違うけどプラナリアが思い浮かんだ』
「あぁ…生物の先生が話してたね」
『覚えてる? わたしあの先生大好き』
「うん、穂波がすきなのは十分伝わってる」
去年の生物の先生はかなり、ぶっ飛んでいて面白かった。
脇道に逸れた話がおもしろい先生っていうのは、
わたしにとってかなり、おもしろい先生だ。
プラナリアの話が授業に関係あったかわかんないけど、
口元に唾を溜めて、時折飛ばしながら、
熱心にプラナリアについて力説するその先生の話に夢中になった。
「いやでも、全然違くない?笑」
『うん、全然違うんだけど… 再生能力的な意味合いでかな』
「うん」
『じゃないと翔陽くんがどんどん増えていっちゃうもんね』
「…笑」
『もしさ、翔陽くんが分裂して3人になってさ…』