第6章 リレー
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「穂波ちゃん!」
「穂波さん!」
昼ごはんの時間。
いつも最終日の昼食は仕込みもないし、配膳にくる。
選手や監督、コーチ、みんなの分をよそいおえて、
マネちゃんたちも順番に食べて行こうかって仁花ちゃんが話を進めてて。
そんな中、リエーフくんと犬岡くんが背後にいて大きな声でわたしの名前を呼んだ。
振り返ると、芝山くんと球彦くんも居て。
音駒の2年生だ。
かわいいかわいい、2年生。
「これ!はいっ!」
背中に回した手からにゅりっと、
出されたのは白と緑の爽やかな花束。
リエーフくんと犬岡くん、2人で持って渡してくれる。
『わぁ、綺麗』
素朴で、可憐で、とても綺麗。
「穂波さんに、だから受け取ってください」
『…ん?』
「ほらやっぱりちゃんとお礼とか言わないとポカンとしちゃってる」
「だって、そんなの言ったら絶対泣いちゃうだろ!」
「でも俺らの気持ちもちゃんと伝えないと」
「………」
わたしの前で、2年生4人が何やら会議を始めて、それから
「穂波さんが手伝ってくれるの今日が最後だって聞いたんで、これ」
「俺らからの花束だから受け取って!」
「「「「穂波さん、ありがとうございました!!!」」」」
何それそんなの聞いてない。
涙、溢れてく……
「これからも研磨さんをよろしくお願いします!」
「犬岡うるさい」
『…ふ 笑』
「いやだってそうじゃないですか、
いやほんとは俺らのこともこれからもって言いたいけど、なんか違うのかなって……」
研磨くんと犬岡くんの愛おしいやりとり…
とは言っても研磨くんの発した言葉は8文字だけだけど、
それこそに、そのやりとりに、胸がキュンとする。
それから、涙も引っ込んだ。
『こちらこそ、ありがとう。
ほんとみんなにはたくさんの刺激と幸せをもらってる。お花もありがとう』
お花を受け取り自然に笑みが溢れれば、
目に溜まった分だけ、涙が頬を伝い落ちる。