第6章 リレー
ー穂波sideー
初めての当たり棒。
ちょっと持って帰りたいような気持ちが湧いてきたけど。
取っておいてもな、って思ってせっかくだしここで交換することにした。
さっき食べたから一本また食べるのは多いけど、
幸いみんながいる。きっと頼めば誰か手伝ってくれる。
今はもう銭湯を出て、
ぞろぞろとみんなで音駒へと向かってるところ。
『あー、わたしにとってガリガリくんソーダ味は、今日この日の味になるよ。
間違いない。いろんな思い出がこれから重ねられても、絶対に今日の日を思い出す』
「お!それ良いな!」
『夕くんのこと、銭湯のこと、この帰り道。夏の夜のこの、空気感。
音駒生だけでは織りなせないこの、賑やかさ』
「おー!なんかアガるぜ!」
『ね、夕くんはそのうちこんな記憶を世界のあちこちで作っていくんだね。
まぁ、場所なんて色々なくても。一つの町だけ過ごした記憶でも、尊さは一緒だけど。
でも、やっぱりわくわくするな、夕くんのこれから』
「俺もすっげーわくわくする!」
『季節バイトとかさ、夏も日本いるなら山小屋とか。
使うタイミングないし、貯まるっていうよね』
「へー知らねー、それ!」
『夏が多いけど、雪降るまでのとこもあるし、雪降ってからもあるけどそれは初心者はね。
山小屋、楽しいかもしれないね。わたしも一度、雲の上で生活してみたい』
「…だな!それすげーいいな!」
『ね、標高2000m以上くらいかな?の山小屋選んで、寝泊まりして。
お仕事して報酬がついてくるなんて万々歳すぎるよね。やってみたいなぁ〜♡
わたしは当面無理そうだから夕くんがもしやるならせめて登りに行くね』
「おー、こいこい!朝日一緒に見ような!あとカップヌードル食おうぜ!」
『あーわかる!山とかキャンプって、手のこんだのももちろん美味しいけど、
結局カップヌードルが一番、ってわけじゃないけど、でも一番美味しいし、記憶に残る』
やっぱり、夕くんとはこういう感じで話が進んでいく。
未来に起こるのか、起きないのか、わからないような。
でもどっちでもいい、もしこれが起きなくても、
きっと必ずわたし達はどこかで再会してその時を今と変わらず謳歌する確信のある感じ。
夕くんとの時間は、ほんと、エネルギーが増殖する。