第6章 リレー
ー研磨sideー
銭湯にみんなと言ってくるね、って言いに来て。
頃合いみて迎えに行くって言った。
…で、今銭湯の入り口の前なんだけど。
中が、すっごい賑やかなのがここからわかる。
ハイテンション組。
烏野だけじゃなくて、リエーフとか犬岡の声もする。
…どーしよ。 やっぱ帰ろっかな、って思ったとこで扉が開いて。
「お!やっぱり!研磨じゃねーか!」
「え」
夕くんって俺のこと研磨って呼んでたっけ。
っていうか、名前呼ばれたことあったっけ。
まぁ、入れよってまるで家に招き入れるかのように腕を掴んで中に連れてかれる。
「西谷さんすげー。研磨さんにそんなグイグイ行ける人あんま居ないっすよ」
「あんまってか、俺初めてみたかも。黒尾さんも、ちょっと違うもんな」
「そろそろ穂波ちゃん上がってくるだろ! お!噂をすれば!」
穂波が、女湯の暖簾をくぐって出てきて。
同じタイミングで月島も出てきて
月島は怪訝そうな顔、穂波はにこって笑って、並んでこっちに向かってくる。
「でも研磨すげーな!研磨きたら本当に穂波ちゃん上がってきたじゃん!」
「…そういうのいいから、翔陽」
実際、扉の前で数分悩んだし。
入るか帰るか。たまたまだ。
『お待たせ、研磨くん。お待たせ、みんな』
「よし!じゃあ早速買ってくるぜ!待ってろ穂波ちゃん!」
『うん!』
夕くんに続いてぞろぞろとみんなアイスの冷凍庫とこに群がる。
それからガリガリくんだとかソフトクリームの形したやつとか
思い思いのものを手に番頭のおばちゃんのとこに持っていく。
『高校最後の夏感がいちいち押し押せてくる』
「…」
『今ね、周平はニュージーランドだよ。9月も向こうだって』
「学校は?」
周平ならなんとかなるんだろうけど。
『学力テストで9月履修予定の分もう満点でクリアして。
出席日数に関しては、向こうの提携校とあれこれしてうまくやってもらうって』
「…へぇ」
『今、ニュージーランドは真夜中。そして、真冬』
「…」
『研磨くんと今こうしていれるだけで幸せ。季節を共有できるだけで』
「…ん」
おれも、そう思うよ。