第6章 リレー
ー研磨sideー
『…っ……』
階段上がったとこのスペースで進撃の巨人を観てるんだけど。
穂波がなんか声にならない音を漏らして口の辺りを手で覆った。
まだ1話目。
まだエグいとこじゃないけど、吐き気?と思って横を向くと、
「…え、なんで」
『気にしないで』
鼻血、出してる。
…気にしないでって言われても。
ティッシュを箱ごととって近づけると、ありがとう、と小さく言って、
手や、鼻の下を拭いて、それから鼻の付け根を押さえる。
…でもすっごい集中してるみたいで、意識があっちに行ってる。
映像は綺麗だし音もいいし、展開は気になるけど、
まだそんな、引き込まれる感じではないんだけど。
なんでそんな、集中してるんだろ。
なんでそんな感じ?
ちょっとよくわかんないまま、続きを観進める。
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「一旦止めよっか」
1話を観終えて、グラスに入ってる麦茶を飲む。
穂波の鼻血はまだ、止まってないっぽい。
「………」
『…気が散っちゃった? もう、止まると思うんだけど』
「ううん、別に。 いやでも、なんでそんな集中してるんだろ、とか思ったかな」
『…エレンの声が』
「……?」
『いや無理無理無理』
「は?」
『……たまにすっごく研磨くんの声と似てた』
「………」
『そしたら違う声出してても、研磨くんと同じ声帯に思えてきて』
「…いやいいよ、それ以上喋らなくて」
エレンの声が似てるなんて思わないし、
でも穂波はこの調子だと鼻血がまた止まらなくなるんじゃないかと思った。
『乱暴な言葉を喋る研磨くんって思うと頭の中パラレルで。
しかもアルミンが…… アルミンが……』
「…なんか、いそがしそうだね 笑」
『とにかく不純なことを考えずに、純粋にストーリーに浸ることに集中してた。
それでも、時折り研磨くんが頭によぎるから、鼻血が止まらない』
「…笑 それは、大変だ」
よく、わかんないけど。