第6章 リレー
・
・
・
夕飯をいっぱいだけど、でもちょうどよく食べて。
一緒に皿を洗って、お茶を飲んで、今、コンビニにアイスを買いに向かってる。
夏の夜。手を繋いで、ゆっくり歩く。
来年の今頃はもう、穂波は日本にいない。
『研磨くん、何の予定?』
「…んー、アイスの実かな」
『ねぇー美味しいよねぇ、マスカット味食べたい』
「いいね、穂波は何にするの?」
『あいすまんじゅうか、アイスの実か、それかソフトクリーム。あの、作ってくれるやつ』
「…あぁ、そっか、そんなのもあるね」
おれらにとってアイスって、近所もジェラート屋のアイスか、
アイスの実か、こたつで雪見だいふく。この3つに絞られてたことにふと、気付いた。
「…コンビニにアイス買いに行くの初めてだね」
『ほんとだね、カズくんとはたまに行くけど、時間的に基本スーパーに行くことの方が多いし』
「…じゃあ今日はアイスの実じゃないのにする」
『わ!じゃあわたしもそうする』
いつもの、があるからこそ、
ちょっと違うの、が楽しかったりするよな、とか。
わかんないけど。
・
・
・
『夕くんはね、ガリガリくんのソーダ味が好きなんだって』
「…へぇ」
…なんか、CMできそう。
『食べたことないって言ったら怒られた』
「…ふ じゃあ、食べてみるの?」
コンビニのアイスコーナーで、多分もう10分くらい悩んでる。
『ううん、明後日、合宿でしょ。
銭湯にガリガリくんソーダ味売ってるから、買ってやる!って言ってくれたから』
「うん 笑」
『その時まで取っておく。 …あ、だから、約束がひとつ入ってて…』
「うん」
『夕くんとアイス食べるね、研磨くんもよければ、一緒に食べようね』
「うん、わかった。タイミングがあえば」
『うん!』
「…で、決まった?」
『…うん、決まった』
おれはもう、決まってたんだけど。
言わないで、せーので取ろう?って穂波が無邪気に言うから。
言わないで、待ってた。