第6章 リレー
ー穂波sideー
8月20日(火)
朝6時。
今日のお昼のフライトでカリフォルニアを発つ。
昨日は日が沈むまで海で遊んで。
もう少ししたら国内線にのって国際空港へ向かう。
今は搭乗ゲートが開くまでのんびりしてるとこ。
お兄ちゃんも一緒にいる。
でもお兄ちゃんは次の大会のためにタヒチへ。
わたし達は日本へ帰る。
お兄ちゃんと話してると携帯がなる。
研磨くんから電話。
『もしもし』
「…ん、今くらいなら電話できるかなって思って」
『うん、嬉しい。ありがとう』
「…何してた、って今待ってる時間か」
『うん、研磨くんは?』
今、日本は夜の10時くらい。
「ゲームして、寝る前にちょっと… 声聞きたいなって思った」
『…ん』
「時差もさ、慣れるし別に、なんてことないよなって」
『うん』
「穂波が大学行く前にカリフォルニアとの時差が掴めてよかったな、とか」
『うん』
「朝ごはんは、向こうで食べるの?」
『うん、お兄ちゃんがいい〜席でチケット取ってくれてるから、
いい〜ラウンジ利用してやろーって話してる』
「…笑 ファーストクラスってこと?」
『いい〜席だよ』
「…笑 …ん、わかった」
『研磨くん、明日会いに行っても良い?』
「…明日?」
『………』
「…穂波は夕方こっちに着くの?」
『うん、間違えた、着いてからの明日。だから明後日』
「ん、木曜日。おれが、行くよ」
『…ほんと?嬉しい』
「…ん、じゃあ、また着いたら連絡して」
『うん、じゃあ研磨くんおやすみ』
「うん、おやすみ。 じゃあね」
こっちは今から1日が始まって。
研磨くんは今から寝るところで。
それって当たり前のようで不思議で、
それから不思議なようで当たり前のこと。
朝のリレーという詩がある。
それが、大好きだ。
わたし達は、朝をリレーしてる。
まぁるい地球で、まぁるくまぁるく。
朝を、リレーしてる。
カリフォルニアと日本じゃバトンは直接つなげないけど、
でもこうして電話をしてると、
研磨くんが送った朝を、わたしが確かに受け取ったみたいな、そんな気持ちになる。