第6章 リレー
【研磨やっほー】
大会期間中だってのに、アキくんからほぼ毎日穂波の写真が送られてくる。
今日は、あの黒いワンピース着て海沿いの街を歩いてるとこ。
手には何か、食べるもの持ってる。何かはわかんない。
かわいい。
構図とか上手なんだけど、いつも通りの穂波がそこに映ってて
アキくんからの穂波の写真が好きだ。
…いやシゲさんのもツトムくんのもすきだけど。
自分で撮ったのより好きなのはなんでだろ。
あんまり撮らないけど、自分で撮ったのは思い出みたいな感じになる。
その時のこと思い出したりするから。
それが好きな人もいるんだろうけど、おれアキくんたちが撮ったのをみる方が好き。
…いつも通りでいられるからかな。
思い出したりとかしないで、一緒にいる時にみたいな感覚で
新しい穂波が見れるっていうか。
穂波がカリフォルニアに行って一週間。
アキくんは順調に勝ち進んでる。
穂波はサーフィンしたり、スケボーしたり、
日本にいるときからエッセー見てもらってたチューターの人に会ったりしてるらしい。
バークレーにあるずっと行きたかったレストランにも行けたって。
予約の取れないところで、アキくんがとってくれてたって興奮気味に話してくれた。
こうやって穂波がたまに海外に行くから、時差の計算とか感覚にも慣れてきた。
アメリカは今サマータイムらしくて
(何それ意味わかんない、って思った。実際賛否両論らしいけど、時計の枠じゃなくて
太陽と生きてる感じの人たちには全く関係ないことなんだろうなって穂波を見てて思う。
良いも悪いもなくってサマータイムがあってもなくても、そんな感じっていうか)
カリフォルニアとの時差は-16時間。
今こっちが朝の8時だから、向こうは夕方の4時。
電話は大体朝の部活前か、昼間、それからこっちの夜ちょっと遅めの時間にしてる。
これが来年からの普通になるんだな、とか想像する。
でもその頃はおれも部活とかやってないし、毎朝同じ時間に登校じゃない。
おれもおれで穂波とは違うニュアンスだけどきっと
時計の枠から外れた生活になるだろうからそんな大変なことじゃない気がしてる。
時差にだって慣れていくんだろうなって、思う。