第5章 hotdogs, layer cakes & parfeit
ー研磨sideー
インド洋上で暮らすタイの遊牧民について、
やや興奮気味に、でもわかりやすく話してくれた。
モーケーン族、とよばれる彼らは、家みたいになってる船の上で暮らしてる。
だから海の遊牧民と呼ばれてるらしい。
子どもたちは1日の大半を海の中で過ごすらしい。
ナマコや魚を獲るために深いとこまで潜ったりするらしいんだけど。
『目のね、仕組みが違うんだって。わたし達、陸で暮らす人間の子ども…っていうか人間と』
「…へぇ?」
『人間の目は陸地での暮らしに照準があってるでしょ、いろいろの構造が。
だから、空気中ではクリアな視界。でも水中ではぼんやりする、目を開けるとね。
それはRefractive index of cornea…角膜の屈折率?が水中では失われるからなんだって』
あまりにも普通に説明してくれるから忘れるけど、
穂波はこれ、英語で読んでから翻訳してくれてるのかって、気付く。
結構専門的な文章、普通に読めるんだな、とか。
角膜の屈折率とか、日本語でも使ったことない。
あるっけ?生物で習ったっけ、意味がわかるってことはまぁ、習ったのかな。
ていうか、話、おもしろいな。
「うん、それで?」
『でね、このモーケーン族の子はね、瞳孔のサイズを小さくしてね、水中でも1.0の視力が維持できるんだって』
「瞳孔を小さくする…」
『でもそれだけじゃこんなにクリアには見えないだろうから、
水晶体の形も変化させてるんじゃないかなって、こっちは憶測。
瞳孔を収縮させて、水晶体の形を変えるって仕組みは、イルカとかアザラシと似てるんだって』
「…へぇ、子供だけなの?」
『そう!大人はハンティングとか釣りで狩りしてるって。
理由は多分、水晶体が子どもものほど柔軟じゃないからじゃないかって』
穂波はしばらくそのモーケーン族の暮らしぶりとかの話を続けて
すごいなぁ…とか言いながらうっとりとした顔で妄想の世界に浸ってた。
すごいね、とかおれも言いながらしばらく穂波を観察して、
またゲームの画面にに視線を戻す。