第5章 hotdogs, layer cakes & parfeit
ー月島sideー
白鳥沢方面行きのバスをベンチに座って待っている。
あのあと穂波さんは、手のひらだけでもマッサージしようと言って、
喫茶店で向かい合って両手の平を揉んでくれた。
普通に、ものすごく気持ちいい。
僕が穂波さんに抱いてる感情は関係なく。
バス停で待ってる間、少しスケボーで遊んでた。
僕にもやるかと聞いてきたけど、断った。
『うん、また気が向いたら』
ってやっぱりあっけなくって。無理強いはしてこない。
「ほんと、あっさりしてるよね」
と言うと
『ん?わかんないけどスケボーは特に。危ないしさ。痛いし。
やりたい人がやればいいことだよね』
だって。
スノボと似てるようで全然違う。
そもそも板に足が固定されてないんだから。
タイヤがあるからひっくり返り方もすごいし…
ってそう、穂波さんは一度思いっきりひっくり返った。
けたけた笑って、きもちいい…って呟いて。
それって、場合によっては怖い絵だけど。
穂波さんはすごく、魅力的だった。
色気すら感じた。こけて、笑ってることに。
この人、結構無理やり痛くやっても、
いいように反応しちゃうんじゃないかな、とか想像してしまう。
転んだ時にアスファルトで腕を擦りむいて、それは結構痛そうで広範囲で。
ペットボトルの水を買って流そうと言うんだけど、
いいよいいよ、大丈夫の一点張りで。
しばらくわやわやと言い合いじゃないけど、言い合ってたら、
道路を挟んで向かい側の家に住んでいるおばあさんが道路を横断してこちらに来て、
「仲がいいねぇ、はいこれ。彼氏の言うことちょっとは聞いてあげなさいね」
と言って水の入ったボウルと凍ったチューペットを渡してきた。
僕はボウルを受け取り、排水溝のところにしゃがんだ穂波さんの腕に水をかけ洗い流す。
少しでも早く治って、傷が残らないようにしてほしい、と勝手に願ってしまう。
こんなのきっと、大したことなくって、日常茶飯事なのかもしれないけど、そう願ってしまうんだから仕方ない。
おばあさんに礼を言ってボウルを返し、
溶けて折れにくくなる前に急いでチューペットを半分に折る。
りんごジュースがそのまま凍ったような、自然な味のするチューペットだった。