第5章 hotdogs, layer cakes & parfeit
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「くっ……」
『んふっ…笑』
スポンジはパサパサに乾いていてもそもそして、
いちごは萎びてて。
クリームは硬く脂っぽい。
この口の中に残る形容しがたい不快感を、
甘ったるくもさわやかなメロンソーダが拭い去る。
「よくわからないけど、この妙に合う感じはなんなの?」
『ふッ… ね… 絶妙な感じを… ふはっ……』
「くくっ 何これ…」
美味しいわけではないのに、
プラマイゼロどころかなぜかプラスになってるみたいな…
よくわかんない事態が起きてる。
それが、シュールというのだろうか、
ここで、今しか起きえないような妙な空気感と相まって、
笑いが込み上げてきて、おさまらない。
『紅茶とは合う?』
「…合わなくはないけど、脂が中途半端に溶けてあと口が気持ち悪い」
『…すごいな、このさ、クリームソーダってとこがミソなのかな』
「…ちょっと 笑 やめてよ、そういう冷静な分析」
こんな状況でも食べ物に対する無垢な探究心を向けてきて、
そんな穂波さんは可愛くもおかしくって、
僕からしたらそんなの、シュールさを加速させるばかりで。
笑いが、おさまらないじゃん。
『…いやすごい 今しかないやつだねこれ』
「…笑」
『絶妙なマリアージュ。蛍くんとわたしは立会人』
「はい?」
『メロンクリームソーダとショートケーキの結婚式』
淡々と意味のわからない言葉を言いのけ、
穂波さんはケーキを掬ったフォークを口に運び咀嚼し飲み込むと、
メロンクリームソーダをちゅーと口に流し込む。
「それを言うなら、仲人じゃないですか」
『なこうど』
「出会わせたのは僕らなわけだし」
『んふっ…笑 たしかに…』
「ちょっと、僕が始めた話じゃないのに、僕が変なこと言ってるみたいな空気やめてください」
『…ふはっ ちょっと待って、違う違う、そんなこと思ってないし、そんな空気出してないッ からっ 笑』
いったい僕はここで何をしてるんだろう。
この人といるとほんとに、いろんな意味でこれを思う。
一つも不快じゃないのが、魅力であり、厄介なところだ。