第5章 hotdogs, layer cakes & parfeit
「やだぁ、穂波さんのエッチ」
蛍くんはイタズラな顔でそう言う。
着たから大丈夫って言っといてっていじわるしたくせに、
さらにこうしていじわるを被せてくるんだから。
でも、いやじゃないのは、蛍くんの塩梅。
『…ん、いいの。目の保養』
「はい?」
『でも脱いでどこかけといた方が乾くかもね。わたしもう大丈夫だから、それがいいかも』
それもそうだけど、なんか上半身裸とか変な感じする、などと言いながら
結局蛍くんはそのままボトムだけ履いてお弁当を食べることにした。
蛍くんのお母さんのお弁当。
美味しい。
お手伝いもさせてもらったけど、微々たるものだ。
「…あ、卵焼き味違う」
『 ! 』
「穂波さんが作ったの?」
『…ん』
「美味しい。好きだな、穂波さんの卵焼き」
『…ん、ありがとう。嬉しい』
普通に照れてしまう。
おいしいと真っ直ぐ言ってもらえるのは、いつだって嬉しい。
お弁当を食べて、服もこんな状態だし、
何より蛍くんの靴が悲惨なことになってるから、のんびりする。
スニーカーは流石に乾いてはくれないだろうなぁ
服だって日向にいればもう少し乾くけど流石に暑いし日陰にいるからゆっくりだ。
「穂波さんってアニメとかみる?」
『アニメ、あんまりみないな。ぼのぼのくらい』
「ぼのぼの?」
『ぼのぼの』
「おもしろいやつ始まったんだよね、春から。元々漫画なんだけど」
『へー、なんてやつ?見てみるー』
「エグいかもしれないけど、なんとなく好きそうかなって思う。2人とも」
『2人、とも…?』
「うん、孤爪さんも好きかなって」
蛍くんのこういうところに、本当にいつも胸がきゅううううってされる。
わたしのことを好きだと言ってくれるのに、
やっぱり蛍くんの中でわたしの隣には研磨くんがちゃんといて。
見守ってくれてる。
そんな風に想ってくれてることに、
想われてることに、
形容しがたいものを度々感じる。