第5章 hotdogs, layer cakes & parfeit
「そんな物欲しそうな顔しないで」
『…蛍くっ …んっ』
蛍くんは、わたしの顔をみて優しい目をした後、耳元でそう言った。
意地悪でそれでいてとびきり甘い、あの声で。
「ははっ おっかしー ほら、穂波さん行くよ」
手を取り指を絡め、学校の裏へと歩く。
もう使われてない焼却炉がある。
どこかで公園っぽいとことかで食べてもいいけど、
校内もいいかも、せっかくだし、って蛍くんの提案で校内で食べてくことに。
わたしもせっかく来たし、嬉しい。
背中に背負ったリュックの中で携帯が震えてるな、って思って
一度、繋いでる手を解いてリュックを前に持ってきて鞄をガサゴソ。
「月島くんっ」
その声に振り返ると、綺麗な女の子。
烏野の制服かな、セーラー服を着てる。
「その人、誰?」
「僕の好きな人です」
そう言いながら蛍くんはわたしの手首を掴んでぐっと引き寄せる。
「…付き合ってるの?」
「そう、思ってもらって構いませんけど?」
「ひどいっ月島くんっ 彼女がいるならそう言ってくれればいいのに…!」
…えっ どういうことだろう?
蛍くんの… 前の彼女? 今、関係のある人?
んー?でもピンとこないなぁ…
でも前色々試したらいいって蛍くんわたしに言ったんだよな…
「彼女がいてもいなくてもあなたに対する態度は変わらないし。
そもそもずっと断ってたでしょ。 …じゃあ僕これから彼女と予定があるので」
行こ、と言って蛍くんはまた歩き出す。
わたしはどうしたらいいのか分からないまま、
ぺこりと小さくお辞儀をして蛍くんに手を引かれるまま歩く。
どしゃっ
という音とともに背中に何かがぶつかる。
痛みと、それからじんわり広がる冷たい感触。
「え?」
『ん?』
「うわ…最悪」
手を解いて、蛍くんが地面から拾い上げたのは、破裂したゼリー飲料の容器。
…なぜ?ここに?
…あぁ、背中にぶつかったのはこれか。
冷たいのは、ゼリーかぁ
…ん?でもなぜ?