第5章 hotdogs, layer cakes & parfeit
ー月島sideー
『けーいくんっ』
クールダウンも片付けも終えたところに、穂波さんが駆け寄ってくる。
なにこれ、かわいいんだけど。
「はい」
『おつかれさまぁ。 わたし昨日、蛍くんにマッサージするの忘れちゃってた』
「…あぁ、ほんとだ」
仙台で一緒にラブホ行った時、いつか足もマッサージするって話になって。
スノボ行った時にやるって言われたけど、僕結構色々我慢の限界だったから断った。
確かに昨日なら、我慢…… できた…… かもしれない。
僕以外の部員は午後も残るらしいので、穂波さんと2人体育館を出る。
下で待ってもらって階段を登り出す頃、
澤村さんと菅原さんが穂波さんに話しかける声が聞こえた。
一人だけで着替える。今日は、私服に。
一人だと部室がむさくるしくなくていい。
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部室を出て、澤村さん達と少し話をして歩き出す。
…弁当、どこで食べるのがいいだろう。
「…あ」
通り過ぎようとした自転車置き場に3年の女子生徒。
あの人、しつこいんだよな。
美人は美人だけど、勘違いしてるっていうか。
健気なしつこさじゃない。
部活?補習?夏休みもちょこちょこ視界に入ってくる。
告白っていうかもはや押し付ける想いみたいなのも何度も聞いた。
「…穂波さんちょっと癪だし不本意だけど」
『へっ?』
こんな理由付きでするなんて癪だけど。
「ちょっと、付き合って」
そう言いながら穂波さんの腰をぐっと引き寄せる。
『およっ』
「…笑」
『蛍くん?』
癪だけど、とか思ったけど。
この人はやっぱ安定のかわいさだ、
そして僕はこの人にぞっこんなわけで。
最も容易く癪だなんて気持ちが掻っ攫われる。
演技なんてできない。
身体を寄せて僕を見上げる穂波さんの髪を耳にかけて、
こめかみを撫でる。 愛おしいという気持ちが溢れて仕方ない。
「穂波さん」
『ん?』
「好きです」
『…うん?ありがとう』