第5章 hotdogs, layer cakes & parfeit
「飲み口が厚いのが確かに、僕もすきかもな、とか思った」
『…ん? あ、飲み口。 前に話したやつ』
「そう。あれからふと、そう思うことがある」
『ふふ… 薄いグラスの方が美味しい飲みものもあるかもしれない。
また見つけたらお互いに報告しようね』
「ははっ うん、わかった。 ほんと、そうやっていちいち……」
『…いちいち?』
蛍くんんは優しい目、優しい声でわたしを包む。
肉体的にじゃなくて、なんだろな。
精神的にともちょっと違って。
今、この空間を?わたしの周りにある空気を。
蛍くんはいつもそうだ。
わたしを一歩引いたとこから見守ってくれる。
それはわたしを繋ぐどころか、羽ばたかせるというか。
見守ってくれてる眼差しが、よりわたしを自由にする感じがある。
研磨くんはもう最強だから、
研磨くんにももちろんそれは感じるけど、
蛍くんのそれは何だろな。
やっぱり、研磨くんを大好きで仕方ないわたしを想ってくれてるっていうのがあるからかな。
時折胸がきゅううとする。 でも繋ぎ止めない、温度感がある。
「なんでもない。 …質問していい?」
『わ。久々。嬉しい!どーぞどーぞ』
「…穂波さんにとっての些細なことって何?」
『ん?』
なんか今までと質問の色がちょっと違うな。
なんていうか、あれだ。 ちょっと、哲学的?
「些細なことっていろいろあるでしょ。いろんなパターンもあるかな」
『…些細なこと』
「うん、些細なこと」
『確かに… いろんなパターンがあるね』
小さくても心を豊かにしてくれる大事なもの。
日々の些細な幸せがわたしを彩ってる。
わたしはしあわせの沸点が非常に低いから、ほんとにそこかしこで幸せを感じる。
肌を焼く太陽、髪を撫でるそよ風、扉を開けると聞こえる海の音。
夜の温泉施設に集まる人々の、この、リラックス感。テレビの音。
非日常ながらも、親戚の集まる家に来た感じのだれ方で大人を待つ子供達。
そういうのは、決して、そんなこと気にしなくていい。とは片付けれない。
些細なようでいて、それこそ大事なんだ、というようなもの。
核心的なことが変わらなくても
ここが変わってしまったら、なくなってしまったら、悲しい。ってもの。