第5章 hotdogs, layer cakes & parfeit
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色々塗りながら、身体を拭きながら、髪を乾かしながら。
潔子さんといろんな話をした。
そして中でもわたしを幸せかつウハウハな気持ちにさせたのは、
「離れてみると、何だろうな、上手く言えないけど田中の存在に気付いたっていうか」
の一言だった。
卒業前に改めて告白をされて、でも、断らなかったけどイエスとも言わなかったって。
田中くんはきっと、もう、慣れてることなんだろうな、
この間の合宿中も相変わらず潔子さん一筋という感じで、
他のマネの子にうつつを抜かすとかそういう感じがなかった。
フラれるという感覚も麻痺してるけど、
フラれなかったっていう感覚もなかったのかもとか。
勝手な憶測だけど。
潔子さん的には、前向きに考える。的な。
今までは可もなく不可もなくな感じだったけど、
春高を経て、ちょっと見方が変わって、抱く感情も変わって。
でもだからって卒業するからって理由だけでOKを出すのもしっくりこないから、
そう、前向きに捉えてこれからもとりあえず関係を続けれたら、みたいなつもりだったみたい。
毎日会ってたとこから、引退後、毎日ではなくなって、
卒業後はもう当たり前に会えない日々が続いて、その存在の大きさに気付いて。
春になって新しい出会いもあるし、潔子さんだもん、いっぱい男の人に声もかけられて、
夏になってそれはさらに勢いを増す。夏を楽しもう、的なあの流れで。
でもそれでどんどん田中くんが薄れてくどころか、濃ゆく濃ゆくなってるのが今だって。
「だから今度は私からちょっといってみようかな」
そう言っていたずらにニヤッと笑う潔子さんは… 潔子さんは…
可愛くて色っぽくて綺麗でとてつもなく魅力的で…
『はぅあっ……』
ってなった。
「穂波ちゃんと孤爪くんみたいに、とは思わないけど、
でも2人みたいに自分たちらしい関係を築けたらいいな」
『うん、うん』
わたし、明日普通な顔して田中くんに会えるかな、なんてぼんやり思いながら、
蛍くんと明光くんとのいる場所に向かった。
潔子さんは蛍くんたちに軽く挨拶をして、一緒に来ていたご家族と一緒に帰っていった。
なんと心の潤う出来事だったんだろ。
潔子さんの美貌にも交わした会話の内容にも心が潤った。