第5章 hotdogs, layer cakes & parfeit
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蛍くんのお母さんがお茶を淹れてくれて、
仙台駅で買ってきたケーキ屋さんのケーキを食べてる。
蛍くんはショートケーキ。
明光くんはオレンジとビターチョコのムース、
お母さんはラズベリーのチーズケーキ、お父さんはティラミス、
最後に残ったヨーグルトクリームのロールケーキをわたしが。
「それも桃が入ってるの?」
『桃とね、マンゴーが入ってる。食べる?』
「うん、食べさせて」
一口掬って……って、ここ蛍くんのご実家!ご両親の前!
そしてわたしは彼女じゃないうえに東京に彼氏がいる!
あぶない。
あーんしそうになった手を引っ込める。
「いいから」
と蛍くんは呟いて、わたしの手首を掴みそのままパクリ。
「…ん、美味しい。ここのケーキ初めて食べた。美味しいんだね」
『あだっ …蛍くんっ』
妙に、照れる。
まずいまずい、誰の顔も見れない。
目を伏せてると蛍くんがにゅって腰をかがめて覗き込んでくる。
「…ははっ どうしたのいきなり」
それから破壊力抜群の蛍くんのこの、笑顔と笑い声。
『どうしたもこうしたも… ない』
「ははっ おっかしー」
『………』
「はい、顔上げて。僕のも一口食べたら?」
『…ん』
いつまでも顔を伏せてても仕方ないし、顔を上げる。
まだ、蛍くんのご両親と明光くんの顔は見れないけど。
「はい、あーん」
『なななっ なんでっ』
あーん、って…
はい、あーんって……
「あははっ ほんと、おっかしー。どうしちゃったのさ、今日は」
『今日はって… 今日はって…』
何で蛍くんそんなに甘いの?
家族の前ではもっとつんつんするんじゃないの?
そう思ってたのに。なに、どうしたのこれ……
心臓が、持たない。