第5章 hotdogs, layer cakes & parfeit
「大好きな初恋の女の子に彼氏ができて。
でもその彼氏といるとすっげー幸せそうだから、手だせねーの。
でも好き。でも、手、出せねー。でも好き。
幸せそうなとこ見るのは嬉しいけど、寂しいべ?」
『…ん、相思相愛だね …ズビビ』
「んだな! チューしても良い?」
『…ふ そういうとこも大好き』
遊児とのパーソナルスペースなんて、
ないようなもので、
それこそ水着だとか夏の薄い服一枚分くらいで。
この歳になっても手は普通につなぐし、水着でもハグするし、
小さい頃から数えると、同じ布団で寝たことも何度もある。
だから、キスなんていくらでも奪えたはずなんだ。
なのに、遊児はそうしてきたこと、一度もない。
いつもこうやっておちゃらけた様子で聞いてきて、そして軽く断って、
ちぇ、とか言いながら次のアソビへと進んでいく。
「…いつか穂波じゃない誰かにマジになって、結婚しても、
穂波にとって代わる存在なんて存在し得ねーべ。安心しろ」
別に不安なわけじゃないし、
誰かの存在をそっくりそのまま埋める存在なんてあり得ないのもわかってるけど。
でも、でも、何故だかその言葉がすごく、嬉しかった。
『うん… 遊児もだからね』
「……穂波のいるとこに入る余地もどこにもないよ? …だべや」
『……?』
「なんでもねー!」
『ん!』
「川入る?それともターザンする?」
『あ!ターザンする!前作ったの千切れてたね。新しく作ろ』
「あ!あと俺スラックライン持ってきた!どっかつけてやるべ!」
『おーーー!いいね、でもわたし流石に今日の格好じゃ無理かも』
「…確かにこけたらあれか。じゃあこっちはばあちゃん家の庭でするか」
そんな風にまた、アソビに夢中になる。
遊児は猿のように木に登る。
わたしも水着のまま木に登る…と、
「こんにちは」
若いお兄さんが、登った木の向かい側にいた。
ロープをつけて両手が空くようにしてて。
ここで出会う人は大体が地元のおじさんばかりだったから、ちょっと驚く。