第5章 hotdogs, layer cakes & parfeit
お弁当もできたし。
水着の上から昨日着てた黒いワンピースを羽織る。
良い天気だし、薄手だから朝干したのもう乾いてた。
庭仕事を終えた遊児は汗だくで、
レモン水を飲んで
「川!行くべ!」
って。
2人ビーサンをつっかけて、
おばあちゃんに行ってきまーすって大声出して、川へと向かう。
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川で遊んでお腹が空いてきてお弁当を広げる。
サンドイッチ弁当は、
ウインナーとケチャップマスタード、キャベツの千切り。
オーソドックスな卵。
トマトとバジルとモッツァレラ。
きゅうりとハム。パプリカとツナ。
その5種類に、すももと葡萄をタッパーに入れて。あと麦茶。
「ちっさいパンでもうめーな!」
ホットドッグ用のパンじゃなくって、
テーブルロールみたいなので作った。
だから今日は全部のサンドイッチがころころしてる。
『ね、このパン美味しいね』
「穂波のこれが俺世界で一番好きだべや!」
この言葉を幼い頃から言われすぎている。
その度、誰にでも作れるのにな、とも思いながら、
すっごく嬉しい気持ちになる。
でもいつか、遊児にの隣にパートナーと呼べる人が現れて。
その人の作るホットドッグを一番美味しいというようになったら。
その出会いに心から嬉しい反面、
きっと絶対、寂しくなる。 そう思った。
それほどに小さい頃からずっと、蓄積された
当たり前にしてはいけない、でも当たり前だからこそありがたいことが
遊児との間にはいっぱいある。
「…あれ? 泣いてる?」
『………』
「はっ!?なんだよ、何があった?」
遊児はぎょっとしつつも、慌ててはいない。
小さい頃からいつもそうだ。
わたしが泣くと、ぎょっとして。
でもぎょっとしながらもいつもより少し落ち着いたトーンになる。
『遊児、すきぃ………』
恋なんてほんと一瞬で落ちることも多くて。
何もかも覆すようなこともあるんだろうけど。
でもやっぱり、積み重ねてきた時間ってすごい。
どっちがどう、とか。どっちの方が、とかじゃなくて。
どっちもが、本当で、どっちもが混在する。