第5章 hotdogs, layer cakes & parfeit
「あの、この卵ってどうやって作るんすか?お湯でぐるぐるするんすか?」
はい、って来てくれた大学生かな、
バイトのお姉さんににっかぁと笑って遊児はそんな質問をした。
バイトのお姉さんはちょっと待ってくださいね、と言ってキッチンへ向かい、
それから電子レンジでするやり方を教えてくれた。
うちの家にはないから使い慣れてないけど、調理室にもレンジはあったはず。
そっかレンジも活用すればいいのか、という大きな発見。
お店の方にも遊児にもありがとう、を伝える。
研磨くんとの時間には起こらない出来事。
遊児といると普通に起きる出来事。
やっぱり人って楽しいな、面白いなって思う。
組み合わせって、面白い。
お店を出て、遊児とバスに乗っておばあちゃん家まで。
お腹が膨れて、バスに揺られて、2人して眠りこけた。
遊児からはいつもほんのり香水の匂いがする。
香水は苦手なのも多いけど、遊児はイソップの香水をつけてて。
イソップのはどれも精油っぽいっていうかどぎつさがなくてすき。
遊児のつける量の塩梅が上手なのもきっとあるんだろうな。
ヘアワックスは無香料なのを選んでるみたいだし、
香りが混ざってないのも、そばにいやすい。
そばに居やすいってのも、おかしいけど。
実際今も、遊児の腕にもたれかかって寝ていたわけだし、
従兄弟であり幼馴染であり親友のような遊児とのこういう時間は
どうしても削れない部分だな、と思う。
研磨くんは別にいいよ、って言ってくれるけど、
実際嫌だって言われたらわたし、どうするんだろうなってふと思う。
何かを選んで何かを捨てる。
取捨選択ができるのだろうか。
何かを選ぶことは何かを選ばないことではあるけど、
でも、捨てずにいられる選択肢を、間のゾーンを、模索してしまう節がある。
「…ん、あ、穂波起きてんの?」
『うん、さっき起きたの』
「…そっか、って乗り過ごしてんじゃん」
『ね、乗り過ごしてるね』
「まいっか、散歩して帰れば」
『ね、わたしもそう思ってた。遊児との散歩、すき』
「…おー、知ってんべ …ふぁぁ…」
この、感じ。
次止まります、ってボタンを押せばとりあえず次で止まるのに。
2人でぼけっと山道を登ってくバスに揺られる。