第4章 宇治金時
ー研磨sideー
「…じゃ、俺はそろそろここで。あ、穂波ちゃん、もっと話したかったけどまたの機会に」
クロが立ち上がってそう言う。
穂波もちょうど上がってきたみたい。
部屋に入ってくる。明日移動だし、パジャマはおれのを貸した。
普通にスウェット地のハーパンとTシャツだけど。
自分の服着てるのってなんでこんな嬉しいんだろ。
『…あ、うん。 また、ね』
「おー、また俺ん家にも遊びにきてねん」
『うん、行く』
「じゃーな研磨」
「あ、うん、バイバイ」
それで穂波はちょこん、っておれの隣に座るんだけど。
なんか、もじもじしてる?
「穂波?」
『…ん?』
「髪、乾かそっか?」
『いいの?嬉しい』
「…ん」
ちょうど歯磨きしたかったし、ついでにドライヤーを取りに行く。
・
・
・
『………だな』
「…ん?聞こえなかった」
『…研磨くんに髪乾かしてもらうの幸せだな』
ドライヤーを止めるとそう聞こえる。
幸せにしたいっつって幸せにされてる、か。
穂波が幸せって言ってくれるだけで確かに嬉しい。
髪を乾かし終えて
オイルを塗るのをぼんやり見届けてるうちに眠気が襲ってくる。
ぼすっと布団に背中を預ける。
おれも穂波もそれぞれ帰りにゴムを買ってきた。
だから、ふた箱もある。
初めて店で買った、ってちょっと恥ずかしげに、
でも冒険を終えて帰ってきた小学生みたいな顔して言ってた。
でもちょっと、もう眠気に勝てなそう…
「穂波〜」
『んー?』
穂波はリモコンで電気を落としておれのとなりに寝転がる。
「ネムイ」
『うん、寝よう寝よう』
そう言うと穂波はおおきなあくびを一つ。
つられておれも一つ。
額に、瞼にキスを落とせば、
もう、無理…と言わんばかりに身体が重くなる。
深い眠りに2人、落ちていく。