第4章 宇治金時
「…なんかすげー いや、これはもうあれだな」
「………」
「この話やめるぞ」
「は?」
「…つーか穂波ちゃんもういねーし」
「穂波?」
「なんでもないっす」
「下で話してるのかな。ていうかそろそろクロ帰れば?」
「………」
「…?」
「………」
「…はぁ なに?」
「比較しないにしてもさ、
穂波ちゃんが研磨のこと好きでいてくれる以外にもなんかあるんだろうなーっつって思うわけですよ」
「…?」
「前な、あの直後話して、研磨の顔とか喋りとか?なんつーの、全然違って。
こういうのはなんなんだろなーっつって思ったよ。覚悟だとかそういうのはまぁ、想像つくけども。
結局まだ俺は経験ねーしな、そこまでの覚悟の」
「あぁ…いやおれも結局空想の世界っていうか。机上の空論っていうか。
実現してないから。覚悟はそりゃ、したけど。別に、言うほどのことでも…」
「研磨クンにとっての、 “言うほどのこと” が現れることは待っていてもこの先ないと思います」
「………」
「まぁその騒動の前から研磨が結婚とか婚約とか考えてるのも知っちゃってるし、別にいいんだけどさ」
「…幸せにしたいって思う」
「………」
「おれが何もしなくても穂波は勝手に幸せそうなのに自分でも意味わかんないんだけど」
「………」
「でも、おれが幸せにしたい って思うのが、いつまで経っても消えない」
「………」
「ふわふわしすぎてて意味わかんない。早くお金稼ぎたい」
「………」
「…ねぇ、ほかの男にさ、ずるいなって思ったらそれは嫉妬?」
「は?」
「昨日、ちょっとあって、そういうの」
「昨日?合宿の後日談的な?」
「いや、月島とか赤葦じゃない」
「カズくんか」
「…ん、ちょっとだけね、ずるいなって思った」
「なにを?」
「………」
「………」
「なんでもない」
「おい!生殺し!気になる!」
「…まぁ、いいよ、もう。 クロ、帰らないの?」
「…お前なぁ……」
「………」
「…でもさ、お前、何ですぐ金稼ぎたいに繋がるんだ?前も言ってたよな」
それはだって…