第4章 宇治金時
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「…点数結構取ってんだろ?なんとかとか言ってたけど」
結局クロは帰んなくって。
今おれの部屋にいる。
おれの隣でコントローラーをかちかちしてる。
穂波は風呂。
「…うん、まぁそんなとこ」
「穂波ちゃんのあの感じはさ、いい点とったっていう意識がないのかね」
「…あの感じって?」
「なんつーの? あの、嫌味とか含みのない感じ?
ニコニコしてて、いつも通りで、嘘もついてねーし、
だけど、これ以上聞かないでおこうって思わせるっつーか」
「…いい点、って思ってるかはわかんないけど。いや、そういう風には思ってないな」
「けど?」
「どうせなら、基準とされてるスコアの上を行きたいとは言ってた」
勝ち気な目をして、楽しそうに。
ぞくっとした。
欲しいって思った。
思い出してもゾワってする。
「おぉ〜なんかいまグッときた。この辺とこの辺が」
「クロ、やめて」
クロが手を当てたのは、胸元と股間。
…はぁ。
「屈託なく天真爛漫で真っ直ぐで、計算で誰かをどうこうするとか一切ねーのに。
でもそういうとこもあんだな、なんつーか、アグレッシブ?いや、アグレッシブはアグレッシブか。
研磨にもぐいぐい来てたしな」
「ただ単に、楽しいから。気持ちいいから、っぽいよね」
「何が?研磨にぐいぐいいくことが?
じゃあおれにもぐいぐい来てくれたらすっげー気持ちよくしてあげるって教えてあげようかな〜♡」
「クロ」
「はい」
「………」
「…まぁ、わかるわ。そんな感じするな。スケボーも転んでも気持ちいいっつってたし」
「…ね」
「はぁ、くるんじゃなかった」
「は?」
人ん家来て、夕飯食べて、帰るとか言っておきながらまた部屋にまで付いてきておいて、それって何?
「お前ら見てるとほんと、彼女できる気がしねー」
「なにそれ」
「……なぁ今度、一日俺に貸して?」
「なにを」
「彼女を。1日だから、24時間」
「やだね」
「本番はしないから」
「は?馬鹿じゃないの」
「じゃあデートだけでも」
「借りようとしてる時点でアウト。
穂波はおれのだけど、でも、そういうのは違う」