第4章 宇治金時
ー穂波sideー
スタジオ近くのデリでもりもりっとサラダを食べてから、帰路につく。
レッスン後にわたしの家ではなく研磨くんのおうちに帰るのなんて初めて。
なんだかうはうはしてしまう。
【電車乗ったよ】
短くテキストを送ると、
【ん、迎えいく】
短く帰ってくる。
わたし達のトーク画面は基本こんな感じ。
短く、かつ事務的というか。あっさりしてる。
声が聞きたくなったら、電話するし。
今は会えるから。
けどアメリカにしばらく住むようになったら、変わってくるかな。
どうかな、未知の世界。
電車はそこそこ混んでいて、
ぼんやりと窓の外を見ながら電車に揺られる。
立ってると本はあまり上手に読めない?というかなんというかだから、
イヤホンをして。
紐のないイヤホンとかヘッドホンとか、いつか発売されるかなぁとか思う。
なんとなく、わたしもあったらいいなって思うし、
研磨くんにはコードレスが似合うなって思う。
しがらみがない感じ。 よくわかんないけど、なんとなく。
いつか発売されたらプレゼントしたい。
改札のところに研磨くんはいた。
グラミチのベージュのハーフパンツに、黒い音駒Tシャツ。
keenのサンダル。
上は部活のTシャツだし、なんでもない格好なんだろうけど、
なんでもないからこそかっこいい。
これはいったいなんなんだろう。
もう、何しても何を着ててもかっこいい。
慣れることなんてあるのかな?
「おかえり、穂波」
『うん!ただいまぁ』
ぎゅっと軽くハグをして、自転車のとこまで歩いて。
研磨くんは自転車のカゴにわたしのバッグを入れてくれる。
宮城行きの荷物があるからちょっとだけ大きい。
夏物だしおばあちゃん家だからそんなにいっぱいはないけど。
「なんか、ほわほわしてる」
『うん、火曜日は毎週トリップするよ』
「…?」
『古典フラからのヨガだからなんか、ほわぁぁぁ〜〜ってなる』
「…ん、顔見てるからなんとか分かるかな」
『…それに加えて今日はそのまま研磨くんのお家なんだもん』
「…ん」
そんなことをぽつぽつと話して研磨くんの家まで歩いて
玄関を抜けてリビングへ。
『お邪魔します』
「おっかえり〜」
クロさんがいて、手をひらひら〜ってして迎えてくれる。