第2章 ふたり
ー穂波sideー
「今日研磨もいるし、ちょうどいいや」
カウンターの向こうでスツールに腰掛け、
夕飯の支度を覗きながらカズくんが呟く。
『…?』
「…あとで話す。 ねぇ、この間買ったアイスの実残ってるよね?」
『うん、残ってるよ〜』
「…やった」
『よし、できるよ。カズくんはパクチー食べれるよね』
「うん」
…研磨くんは別添えにしとこっと。
カズくんのお弁当を蒸し器で温め直して、
いろいろよそって、完成!
鶏肉のフォー、ベトナム風のキャベツサラダ。
カズくんのお弁当はカオマンガイ。なんか、ぴったり。
「…これなに?2人は乗せてるの」
『それ、パクチー。別添えにした。食べれる?』
「食べたことない… ちょっとかじってみる」
『あっ』
「研磨、だめ」
「…え?」
『えっとね、もし食べるならスープと一緒にとかフォーと一緒に』
「そのまま食べたら、初めての人は多分無理ってなる」
「…え、何それ怖いんだけど」
「食べるならあったかいスープに入れてそのままフォーと食べなよ」
「…ん、じゃあそうする」
わたしは小学校低学年の頃、
旅行に行ってたタイで、
お兄ちゃんがよく頼んでた春雨サラダの唐辛子抜きのやつ。
食べる度に、カメムシか何か虫が入ってるなぁって思いながら、
それでもそれ以外の味が美味しくて食べてた。
他の料理はわたしのためにパクチーは別添えだったのもあって、
それがパクチーだと知ったのは日本に帰ってきてからだった。
それからパクチーという存在を知っても、
食べることはできるけど美味しいとは思わないなぁ…と言った感じで。
でもある日、お母さんの作ったカレーに乗せて食べたらすっごく美味しくて、
それからはもう、パクチーの美味しさに目覚めてしまった。
なんでもそうだけど、
パクチーなんていう強烈な個性を持った子は
タイミングと合わせ方がすっごく大事だな、って思う。
…だから、うん。
研磨くんがそのまま齧るっていうのを、止めれてよかった。