第4章 宇治金時
ー穂波sideー
朝食の後まだ時間があったから
ゆっくりしててね、って言ったけど研磨くんはお皿を洗ってくれた。
穂波は洗濯とかあったらやってて、って言ってくれたけど、
わたしは今日夕方のレッスン以外これといった予定もないし、
研磨くんと一緒にいたくてキッチンであれこれをした。
こうしてお互いの時間を尊重しながらやらないといけないことをやったりしてると、
なんだか2人の家にいるような気がしてくる時がある。
それはそれは、幸せな錯覚。
「…穂波?」
『え? ん?』
「にやけてる。大丈夫?」
『え?あ、うん、健全!大丈夫!』
「…健全?笑」
『えっ?うん、健全!』
「…よくわかんないけど、それならよかった」
お弁当ももう包んだし、
お茶を淹れて2人ソファでちょっとゆっくりしようかなって思ったんだけど…
「穂波洗濯干すでしょ?おれ、ベランダのとこでゲームする」
って。洗濯干すの一緒にするって言われたらきっと断ってた。
何だろな、だって研磨くん部活でしょ、わたしオフだからって。
でも、うまい具合に洗濯物を先に干しちゃうように促された。
『うん、じゃあそうする』
そういって洗濯カゴを取りに行くと
研磨くんはついでに、といった感じで歯ブラシを取りに来た。
研磨くんはよく泊まっていってくれるので、歯ブラシはうちにも置いてある。
第一弾の洗濯物を取り出した後に回しておいたのももう終わってる。
シーツとかそういうリネン類。
それも一緒に持って上がる。
それからわたしが洗濯物を干してる間、
研磨くんは影のとこにある外用のカウチに座って本当にゲームをして過ごしてた。
途中、口を濯ぎに降りて、また上がってきて。
なんだか本当に本当に、一緒に暮らしてるみたいな気分になって。
朝からニヤニヤが止まらない。
これは、そう、健全な妄想である。
「…穂波?」
『んー?♪』
「…健全?」
『うん、健全♪』
「…笑」
研磨くんの質問の意図はわかんないけど、
るんるんだ。
鼻歌まじりに洗濯を干し終えた。