第4章 宇治金時
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「明後日、何時に出るんだっけ?」
甘味処を出て、研磨くんの家に手を繋いで向かってる。
時折手にかいた汗を拭いながら。
なんだか愛おしい時間。
『9時半くらいには駅に着いておく感じ』
「…明日、泊まってく?」
『…え』
「…無理が、なければ」
『うん。泊まりたい。嬉しい』
「ん。 あ、そうだ」
『ん?』
「月島から、聞いたけど」
『…あっ』
すっかり忘れてしまっていた。
最近ちょっと忘れっぽい気がする…
「…自分から話す?」
嫉妬ももやもやも苛立ちもない、研磨くんの声。
『うん。ごめんね、遅くなっちゃって。んーと…
ご両親に挨拶に行くときに泊まってかないかって。
泊まってけば部活はあるけど烏野周辺案内できるよって…』
「うん。いいんじゃない?」
『…いいの?』
「寝る部屋は別だって言ってたし。ゲストルーム的なとこあるからって」
『…研磨くんはどうして』
「……」
『どうしてこんなわたしにそれでもいいって言ってくれるの?』
つい一昨日、京治くんにキスしてしまったというのに。
「寝取られ願望があるから」
『へっ!?ねと…られ?』
「うそ、本当に嘘。 1ミリもない、そんな願望」
『…?』
ねとられ…… 寝取られ!?
『あだっ…』
「だからないから、だめだよ絶対」
『はい!』
「…笑」
『……』
「単純にまずおれ、月島のこと信頼してる。実績あるって言うのも変だけど」
『……』
「月島は、穂波が本当にいいよって言うまで絶対に決定的なことはしてこないよ。
…って、キスはしていいことになってるわけじゃないからね」
『……』
「その点赤葦は、ちょっと穂波っぽいとこあるから」
『…?』
「赤葦とは泊まりとか絶対無理。木兎サンの方がよっぽどまし」
『あああ光太郎くん。会いたくなっちゃった』
…研磨くんの観察によるそれはきっと
大きく外れるってことはないんだろうな、とか思った。
そっか、前スノボのことで蛍くんに電話で話してたの聞こえたな。
「おれ、月島のこと結構信頼してるから」
って。
そしてそれを蛍くんは 脅迫だ って言ってた。