第4章 宇治金時
ー研磨sideー
『う〜ん、美味しい♡』
うっとりした顔で穂波が呟く。
おれの頼んだわらび餅を食べて。
『すきなとことって食べてどーぞ』
スプーンを渡してくるけど
「ううん、穂波に任せる。あーんして」
『…ん、わかった』
言ってみると急にもじもじして、
それからあんこと一緒に掬ってくれる。
流れだと普通にするのに、お願いするともじもじする。
これが、またおもしろくて、かわいい。
『はい、あーん』
「ん」
口を開けると冷たいのが入ってくる。
苦くて甘くてさっぱりしててあんこはつぶつぶしてるけどねっとり。
…うま
「…おいし」
『ね、美味しいね。まだまだ食べてね』
「…ん、もう一口ちょうだい」
そんな感じで時間が過ぎてく。
穂波は食べるの早くないから最後の方はさらさら。飲み物みたい。
でも、甘過ぎないし抹茶だし。スプーンで掬ってスープを飲むみたいにして食べてる。
たまにおれの口元にも運ばれてきたりして。
食べてる途中で足元に猫がやってきた。
すりすりしてくる。
机の下を見てみると黒猫。
それから穂波の足元で三毛猫が寝てる。
猫ってなんか、きままで、いいなとか思う。
好きなことばかりしてるっていうより、
嫌いなことはしない。っていうか。
気持ちいいを知ってる印象がなんでか知らないけど、ある。
飼ったことないしよく知らないけど。
『はぁぁー美味しかったぁ』
「ね、美味しかった」
少し話してると、店の人がお茶いりますかって。
冷たいのと熱いのどっちがいい?って。
おれは冷たいの、穂波は熱いのをお願いした。
お茶が机にあるだけで、ここにいていいですよ。って言われてる感じがするって、
穂波が前に言ってた。
なんとなく、それ、わかるなって思う。
それから穂波はいつもさりげなく、自分のとこに訪れた人にお茶を出す。
それが、すきだったりする。
自分にされるのも、人にしてるのをみるのも。